教えないコーチング

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多くのマネージャーは教え過ぎだ

矛盾したタイトルから今日は話を始める。

教えないコーチング?

何を言っているのか?

そう思われる方もいるかもしれない。

ただ、僕が普段やっていることを言語化するとこんな感じになるのだ(僕は「コーチング」という言葉があまり好きではないのだけれど、一般的には普及している言葉だと思うし、イメージが分かり易いので、今回は敢えて使っている)。

部下の育成において、「教えない」ことはとても重要である。

反面、多くのマネージャーは「教え過ぎ」である。

今日はそんな話をしていく。

想いが強すぎるし、それは片思いである

世の中には部下育成に関する本が溢れている。

それだけみんな部下育成に悩んでいるのだと思う。

まず前提として、「部下は育たない」ということを認識しておくとよい、と僕は思っている。

もう少し厳密に言うと、「部下を育てることはできない」「育ったらラッキー」くらいのスタンスで部下育成に臨むと丁度いい、と僕は思っている。

多くのマネージャーは想いが強すぎる

そしてそれは片思いである

この辺のニュアンスをまず認識して欲しい。

あなたのその愛情は重すぎないか?

よっぽど変なマネージャーでなければ、部下に成長して欲しくない人はいないと思う。

それは僕だってそうだ。

誰だって部下に成長して欲しいと思っている。

だから、手をかけ、時間をかけ、部下指導に心血を注ぐ。

でも、その想いが強すぎると、部下はそれを受け止めることができない。

恋愛と同じで、双方に同じくらいの熱量がなければ、それはただの「重い人」になってしまうのだ。

この辺の認識があまりないマネージャーがとても多い。

タイミング・タイミング・タイミング

そして手を掛ければ掛けるほど、部下が育つと思うのも大間違いである。

部下指導にはタイミングがとても重要なのだ。

部下が話を聞きたいと思った瞬間を逃さずに、的確に現在の状況にあったレベル感の指導を行う、ことがとても重要である。

速すぎても遅すぎても、難しすぎても簡単すぎてもいけない。

その人の現在の状況にあった言葉が必要なのだ。

自分の状況を自分で認識させ、言語化させる

ではそのタイミングはどのように見極めるべきなのか?

それは「質問を継続する」ことだと僕は思っている。

「問診」と言い換えてもいい。

名医とヤブ医者の違いと言えば分かり易いだろうか?

薬を与えることが名医の条件ではない。

むしろ与えないで、自然治癒力を活かすという方法だってある。

でもだからと言って、全部が全部自然治癒力に任せていたら、患者が死んでしまうかもしれない。

この見極めを行うのが「問診」である。

単純に「今の気分は?」みたいな質問から、「最近どんな感じ?」であるとか「何か調子悪いところある?」「どこが痛い?」みたいな質問まで、要は相手の状態を把握するということがとても重要なのである。

そして自分の体の状態を自分で認識させ、言語化させる。

これがとても重要なのだ。

自分の言葉でなければ、自分には響かない

ビジネスに置き換えると、教えるのではなく、自分で考えさせる、というありきたりな言葉になる。

自分で考えさせ、それを言語化し、アウトプットさせることで、自らその改善策を認識し、実行させる、と言い換えてもいい。

その相手役、壁、がマネージャーなのである。

僕はマネージャーをやっていて気付いたのは、多くの人は自分のフォームが崩れていることを自分では認識できないし、それを語る言葉を持たない、ということである。

そしてそのイメージというのは、自分の言葉で表現しないとなかなかしっくりこない、ということに繋がってくる。

ミスターとゴジラのような天才同士なら理解し合えるのだろうけれど

かつて長嶋監督が打撃を独自の言葉で表現したように、天才というのは、自分の体の状態を感覚的な言葉に置き換える能力が高くて、それは常人には理解できない(松井秀喜くらいしかたぶんわからない)ということをマネージャーをやっていると思うことがある。

自分が営業の天才だとは思わないけれど、少なくともそこにいるメンバーよりは感覚的にやっている部分が僕にはあって、それをそのままの状態で差し出したとしても、受け手には「よくわからん」ということが、駆け出しの頃にはよくあったものである。

僕の中では最短距離で、最大効率のやり方であったとしても、相手の現在の力量ではそれを実現できない、だから一方的な指導(片思い)になってしまう、というのが、部下育成においてよく見られる事象であると僕は思っている。

だからそうではなく、上記した「問診」を定期的に行って、相手の状態をまず確かめ、そして相手に自分の状態を考えさせ、言語化させる、ということがとても重要なのである。

時が来れば(そしてそれを理解できるくらいのセンスを持った担当であれば)、自分の感覚をダイレクトに伝えればいい。

でも大抵の部下はその領域まで到達することがないのも現実である。

教えるのではなく、壁になる

じれったい、という気持ちはよくわかる。

でも部下が育つためには時間が何よりも重要で、それは自分ではコントロールできない種類のものであるということを理解しておく必要がある。

教えるのではなく、壁になる。

手の言葉を反射させ、自分で考えさせる。

それをひたすら地道に繰り返していく以外に、部下育成の方法はないのだ。

それではまた。

いい仕事をしましょう。


あとがき

今回の話は、自分では比較的よく書けたなと思っています。

僕は部下育成に定評があると言われる(あまり自覚はない)のですが、それを自分なりに表現すると、本文のようなものになると思います。

マネージャーにできることは、部下が自分の状態を言語化することを助けることであって、決して自分の言葉を押し付けることではありません。

それを僕は「壁」という言葉で表現しています。

じれったいのは僕も一緒です。

部下の言語化能力を伸ばしていきましょう。