場数を踏もう
マネージャーの出番は急にやってくる
マネジメント業務をやっていると本当に色々なことが起こる。
そしてそれはネガティブなものの方が圧倒的に多い。9:1くらいの割合だ。
ネガティブなものの筆頭は顧客からの苦情対応だ。
今となっては「よくあることだ」と思えるようになったけれど、マネージャーになりたての頃には「何でこんなに苦情を起こせるのか」と思ったものだ。
更に悪いことに、それは「手遅れ」になっていることが多い。
もう少し手前の段階で報告なり相談してくれていれば、こんなに大きな火事にならなかったのに、という場合が殆どだ。
そしてその時こそマネージャーの出番となる。
マネージャーの仕事の大半は謝ることだと言っても言い過ぎではないと思う。
それこそたくさんのご意見をお客様から賜ることになった。
そしてその殆どは明らかにこちらの部下に非があるものだった。
お客様の言っていることは至極真っ当で、そりゃ怒るよな、と思うことが大半だった。
その度に本当に嫌な気分になる。お客様に心から同情し、申し訳なさで一杯になる。
お客様からのお許しを頂いて、戻ってくると確かに部下も反省しているような感じだ。
部下にもお客様の思いや、そうならない為にはどうすればよかったのか、等こんこんと話して、再発がないように言い聞かせる。
これでしばらくは大丈夫だろう、と僕は思う。
でも案の定というか、またすぐにお叱りを受ける。
また出ていく。
以下繰り返し。
とりあえず打席に立ち続ける
全然誇れることではないけれど、こうして「苦情対応スキル」が磨かれていく。
大抵のことでは動じなくなる。
他の事象でもそうだ。
部下のミス、とんでもない間違い、揉め事、その他諸々のネガティブな事象。
胃の奥がキュッとなる物事の数々。
そういうものは経験が解決してくれる。
本当は慣れてはいけないのだろうけれど、5年間もマネージャーをやっていれば、一通りの対処方法は身に付けることができる。
初めての事象であったとしても、過去の一例を応用させることで対応できるようになる。
これは誇っていいのかはわからないが、成長と言えると思う。
「若いころの苦労は買ってでもしろ」というような格言があるけれど、マネージャーもそうだ。
なるべく駆け出しの時に色々な事象に当たっておくほうが良い。
突然猛スピードで向かってくるボールに向き合わなければならないからだ。
準備運動も何もなく突然打席に立たされて、必ず最低限ヒットは打たなければならない局面が訪れる。
マジかよ、と思いながらヘルメットもなしにバットを振る。
日々そんな感じだ。
いきなりの剛速球が飛んでくるので、できるだけ多く打席に立っておいた方がいい。
もちろん最初は全然バットに当たらないだろう。
それでもとにかく打席に立たなければ始まらない。
ネガティブな事象はマネージャーを強くしてくれる
ネガティブな局面というのは慣れていないと本当に逃げ出してしまいたくなる。
完全に逃げなくても、部下に任せようとしてしまったり、部下の責任にしようとしてしまったり、甘い囁きが頭を幾度もよぎる。
でも僕の経験から言えば、逃げてよいことは何一つない。
とりあえず勇気を振り絞って、震えながらでも前に出ることが大事だ。
一旦立ってしまえばあとはどうにでもなる。
もちろん数日は眠れない夜を過ごしたり、胃に穴が開きそうな日々を過ごさなくてはならない。
でもそこに留まっていれば、それは貴重な財産となる。
よく「苦情は宝だ」と本当に人間のできた人が言う言葉があるけれど、少しずつ僕もこの気持ちがわかるようになってきた。
苦情に限らず、失敗やミスやそういったものもすべて吸収する。
それはその当時には大きな傷になるのだけれど、乾いてかさぶたになっていくとその部分はより強くなる。
色々な経験をすると、必然的に物事を多面的に見られるようになる。
お客様の気持ち、部下の考え、チームの問題点、組織の矛盾、改善点、そういったものが体感としてわかってくる。
それは君の決断に重みを与えてくれる。
困難を笑い飛ばせるくらいに
もちろんもっと穏やかに仕事ができるように優秀な部下がいたらいいなと思うこともある。
でもどちらにせよマネジメントをしていればそういった修羅場は必ず訪れる。
その経験はなるべく早い方がいい。
いきなりメジャーの球は打てないのだ。
マネージャーの力は何を持って測るのか、というのは最近僕が考えているテーマではあるけれど、こういう「場数をどのくらい踏んでいるか」というのは結構大事な要素であるように思う。
動じてはいるんだけれど、まあどうにかなるよね、と思えること。
できれば部下達の気持ちを奮い立たせるくらいになること。
むしろ、来た来た、待ってました、と笑い飛ばせるくらいの度量を持つこと。
そこまでにはまだ至っていない僕でも、そういう風に考えることで難局も乗り越えられるくらいの胆力が身についていったらいいなと考えている。
そうなりたいと思う。
それではまた。
いい仕事をしましょう。
編集後記
「予想外」のことが起きた時にそのあまりの突拍子のなさに笑いが込み上げてきてしまう、というのが僕の長所(短所でなく)ではないか、と最近考えています。
僕はこういうシュールというかシニカルな笑いの効用を信じています。
本当に深刻な場面においては、人間は笑うことでその場の緊張をほぐし、リラックスした状態で頭を回転させやすくさせる、という生来の能力が備わっているのではないか、そんなことを考えています。
もちろんその笑いが不謹慎になってはいけないのですが、ただ落ち込んでいたり、当たり散らしていても事態は何も改善しません。
物事を前向きに、建設的に考えて、笑えるくらいの大きな度量を持って対処していきましょう。