時間の流れに身を任せる

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揺蕩うこと

今日は時間軸の話だ。

マネージャーをやっていてつくづく思うのが、「ローマは一日にして成らず」である。

いや、自分のチームがローマだと言いたい訳ではない。

メンバーの成長も、チームの成熟も、時間がかかるということである。

そしてそれに対してマネージャーができることというのは、時間と共に生きる、ということなのだろう、と最近は思っている。

どうしてもプレイヤー時代の感覚から、パッとやってすぐ変化する(結果が出る)、というようなものを求めてしまいがちであるけれど、マネジメント業務というのはたぶんそういうものではないのだ。

もっとゆったりと大局的に構える必要がある。

もう少し言うと、そこで起きる様々な要素というのはコントロール不能であるし、コントロールすべきものでもない。

今日はそんな話をしてみる。

スピード命

ある事象が起きた時に、それに対してできるだけ早く動きたくなる、その気持ちはよくわかる。

すぐ動いて、対処する。

それはビジネスにおいてとても大事なことである。

ましてや自分がプレイヤーとしてそれで成功してきたタイプであれば(たぶん僕もその1人だ)、尚更のことである。

正そうとすることは正しそうだけれど…

例えば、メンバー同士のいざこざがあったとする。

そしてその原因となるものが、片方の態度や言動であったとする。

すると、その片方のメンバーの態度や言動をすぐに正そうとしたくなる(もちろん他のメンバーからの意見など、客観的な事実を掴んでからの話ではあるけれど)。

これは何もおかしなことではない。

というか、むしろ望ましい態度であるようにすら思える。

僕も駆け出しのマネージャーの頃はそう思っていた。

ただ、現在は少し考えが異なるのだ。

その片方のメンバーと話をするところまでは一緒だろう。

ただ「正そう」とは今はしない。

できるだけフラットな状態で「話を聞く」、そして「時間が流れるのを待つ」というのが現在のやり方である。

速く対応すると反動も大きい

「何を悠長な!」

「そんなことやっていたら問題が大きくなりますよ!」

その意見もわかる。

ただ、若干感覚的なものにはなってしまうのだけれど、「パッと動いたものには同じくらいの速さの反動が来るものなので、自分は解決した気になっているのだけれど、別のところでまた違うタイプの問題が起きるだけ」というように今は思っているのだ。

もちろん手を入れないわけではない。

ただその手の入れ方をもう少しソフトにして、時間を味方につける。

そういう感じである。

正しさよりも大切なこと

これは人間が丸くなったと言えるかもしれないし、寝技に持ち込んでいるだけと言えるかもしれない。

とにかくあまり拙速に動かずに、鎮静化する方向に意識を向けること。

正しいか間違っているかにはあまりこだわらないこと。

それが大事なのである。

事なかれ主義? 正解!

こういう書き方をすると、「事なかれ主義」みたいな印象を持たれる方もいると思う。

その感覚は間違っていない。

遠目から見れば、大した違いはないように僕だって思うだろう。

ただ違うのである。

僕は継続的に話を続けるからである。

1日の100よりも、ずっとの20

以前の僕が、ある問題に対して100の力で臨んでいたとするなら、今は20くらいの感じである。

ただ100は1日というか、その場だけの力であって、20はずっと継続的な力という違いがある。

100が高音、20がベース音、そんな感じである。

ずっと低音の状態で鳴らし続ける。

そして時間と共に徐々に良い方向へシフトさせていく。

言葉が言葉として浸透する為には時間を必要とする

これは相互理解には時間がかかる、と言い換えることができるかもしれない。

人間を知るというのは、それなりに時間が必要であるし、それも時間の共有が必要である。

もう少し感覚的な話をすると、言葉が言葉として浸透する為には時間を必要とする、そういうことなのかもしれない。

作用と反作用

どうしても瞬間的な言葉瞬発力のある言葉というのは、反力を生む(作用と反作用)

そして言葉尻で物事を捉えがちである。

でも本質は違う。

じんわりと伝わっていくものである。

それには時間がかかる。

思い返したり、内省したりする時間が必要となる。

僕はそんな風に考えている。

大事なのは事態を良化させること

正義論みたいな話になってしまうけれど、正しさというのはある一面しか表していない。

当然ながら逆サイドはあるし、もっと言うと斜め方向横方向など360度それぞれの正しさがある。

そしてマネジメントにおいて大事なことは、正しさを主張して相手を動かすことではない。

もう少し丁寧に言うと、正しさを主張しても別にいいけれど、大事なのは相手を動かすことであって、自分の考える正しさが相手に刺さっていなくて、相手も動かないのであれば何の意味もない、ということである。

本当に大切なことは事態を良化させることであって、議論で勝ったり、相手をやり込めたりすることではない。

強い言葉は強い反発を生む。

角を立てるのではなく、時間を味方につけながら、望ましい方向へリードしていく。

そういう力がマネージャーには求められるのだ。

それではまた。

いい仕事をしましょう。


あとがき

勝負に負けて試合に勝つ、ではないですが、瞬間瞬間の勝負よりも大局的に物事を見ることがマネジメントには求められます。

その中でも、「時間を味方につける」というのが今回のテーマです。

手を打つというのは、一見良さそうではありますが、それなりの反動もある訳で、それをきちんと認識しておくことが大事(めくらめっぽう手を打ってはダメ)なのだと、マネージャー経験を重ねるにつれ実感しています。

部下にもメンツはあります。

じっくりいきましょう。