ルーティンがルーティン化しない人達へのマネジメント
なぜ同じことができないのか?
僕がマネージャーになって驚いたことの1つに、世の中には昨日と同じことを今日やることができない人が想像以上にいる、ということがある。
もっと言うなら、さっきやったことを今同じようにやることができない、ということだって日常茶飯事である。
一方、マネジメントというのは、ある種繰り返しの作業でもある。
同じことを同じようにやることで(やってもらうことで)、日々の業務のベース(土台)ができ、その上に様々な構築物を重ねていくという仕事である。
だがしかし。
それが土台から揺らぐというか、そもそも土台が出来ないということに、マネージャーになった当初は眩暈がしたものである。
なぜこんな簡単なことができないのか?
だって昨日やったでしょ?
そのようなNGワードを排し、成果を出す方について今日は書いていこうと思う。
淡々と同じことを言う
と大風呂敷を広げたものの、僕が普段やっていることはそんなに大層なことではない。
呆れずに、淡々と同じことを言う、それだけである。
そこに感情はいらない。
ガッカリしたり、落ち込んだり、腹を立てたりする必要はない。
AIのように、同じことを同じトーンで言い続けることが大事なのだ。
イライラはいらない
もちろん僕だって思うことはある。
イライラしたりもする。
でも、そんな思いをぶつけたとて、イライラしたところを見せたとて、その人たちがルーティン業務をできるようにはならないのである。
だったら、その思いやイライラなんている?
それが僕が8年間マネージャーをやって到達した境地である。
大事なのは感情じゃない。ルーティンをやってもらうことそれ自体だ。
大事なことは「ルーティン業務をルーティン業務としてやってもらうことそれ自体」である。
冒頭の自分の言葉を拝借するなら、日々の業務のベースを作るそのことに意味がある。
そこに無用な体力や気力を注ぐ必要はない。
あくまでもそれはルーティン業務に過ぎないのだ。
だったら、さっさと指示をして、次に進めばいい。
もっと大事な仕事に意識を向けた方が良い。
僕はそんな風に考えている(考えるようにしている)。
キレたら負け
そういう意味では、今日の話というのは、技術論というよりもメンタルコントロールの類なのかもしれない。
マネージャーを長くやって、自分の振る舞いや他者の振る舞いを見直してみる中で僕が気づいたのは、「キレることのダメージの大きさ」である。
もう少し正確に書くならば、キレるところまで行かなくても、イライラした素振りを見せてしまうことによる損失の大きさである。
そしてそれは瞬間風速的なダメージの大きさもさることながら、慢性疾患のようにずっとダメージを与え続けるから厄介なのだ。
マネージャーへの信頼が損なわれ、自分の言葉がチームに浸透しなくなってしまう。
それだけは避けなければならない。
だったら、ルーティン業務がルーティン化しないことくらいなんだっていうのだ?
そのくらいのマインドで仕事に臨むと良いと思う。
作業負担を極限まで減らす
そして、メンタル面だけでなくテクニカルなことを付け加えるなら、なるべく作業負担が少なくなるような制度設計を行うことが重要、ということである。
それぞれの職種や業務内容によってルーティン業務は異なるとは思うけれど、その負担感を極限まで減らしたらどうなるか、ということは考えて損はない。
その際に「このくらいなら誰だってできるでしょ?」という考え方はNGだ。
それができない人がいるから(そんなはずはないと思うから)、イライラするわけなのである。
それをもう1歩進める。
人間は面倒くさがる生き物だ
例えば何らかの簡単な入力作業があるとして、それを習慣づけできていないのが現状であるとする。
普通であれば、ここでイライラする。
でも一歩立ち止まって、これをもっと負担なくできる方法はないかと考えてみる。
イメージとしては、家事(家電)の進化みたいなものだ。
スイッチを入れる、コンセントにプラグを入れる、このくらいのことが人間は面倒だと思う生き物である。
だったら、スイッチを入れる作業を失くす、蓄電できるようにする、ようにしてしまえば、その労力はなくなる(コードレス掃除機みたいに)。
この心理的負担と作業負担をどうやって減らすか?
そこに知恵を絞ることが重要である。
UIを進化させるみたいなイメージで
更に言うなら、ネガティブな要素よりもポジティブな要素を多くすることも大事である。
その人がそれをやることでポジティブな気持ちになるような制度設計が望ましい。
自尊心を満たしたり、達成感を得られたり、単なる作業を少しだけポップにすることができれば、ルーティンがルーティン化しやすくなる。
そう考えてみると、UI(ユーザーインターフェース)の進化や、アプリゲームを習慣化させる為の報酬みたいなものにイメージが近いような気がしてきたので、そういう仕事だとマネージャー自身が思えると、もしかしたら冒頭に書いたようなイライラは減らせるのかもしれない。
多くのユーザー(部下)に気軽に毎日利用してもらう為の製品を開発する、そんなイメージでルーティン業務をルーティン化してみれば、自身のメンタルもコントロールでき、実際の効果も得られるはずである。
それではまた。
いい仕事をしましょう。
あとがき
日本企業と外国企業の違い。
ユーザーが悪いと考えるか、こちら側の制度設計が悪いと考えるか。
今回のテーマを書いて僕が思ったのはこのようなことです。
マネジメントもきっと一緒で、どんなにできない部下であったとしてもできるように、知恵を絞ることが僕たちの仕事です。
もちろん、普段の仕事の中では色々なことが起こり過ぎるので、そこまで達観することはできないのですが、平静時にそういうユーザーフレンドリーな思想を持っておくことは大事なことだと僕は思っています。
大事なのは成果です。
下らない感情を排し、淡々と仕事をしていきましょう。