「すぐ辞める」若手問題について
早期離職を防ぐには?
「若手がすぐに会社を辞める」
「気が付けば会議室に呼ばれ、退職を切り出される」
まだ新年度も始まってすぐだと言うのに、このような話をメディア等でよく目にする。
もちろん、そこにはメディアらしさというか、エンタメマシマシで話を大きくしている部分がないとは言い切れないけれど、僕個人の実感としてもこの数年(特にコロナ期以降)、若手が簡単に辞めるようになったなとは思う。
それに対して、様々な識者が様々なことを言っている。
そしてその論調としては、早期離職を防ぐ為に「若手に寄り添いましょう」「心理的安全性を確保しましょう」というような、どちらかというとラブ&ピース的な話になることが多いような気がしている。
確かに、そのような対応方法が有効(ないしはそうせざるを得ない)という側面はあると思う。
でも、何となく僕はここに違和感を覚えている。
会社ってそもそもそういう場所なんだっけ?
人材不足でヒーヒー言っている会社側には申し訳ないけれど、僕はそう思ってしまうのだ。
では、どのような形でこの「若手すぐ辞める問題」に対処すればいいのか?
今日はそんなことを書いてみようと思う。
それでは始めていこう。
一応若手の育成に定評があるそうです…
最初にお断りしておくが、僕は若手の育成に(そこそこ)定評があると言われている。
あまり自覚はないけれど、他の部署で「使えない」という烙印を押された部下がそれなりに多く僕の元に異動してくることを鑑みると、あながち間違ってもいないのではないだろうか、と自分でも思っている。
ただ、じゃあ何か具体的な再生計画というか、再生プログラムみたいなものがあるかと問われると「特にない」というのが実態である。
また、冒頭に書いたように、「若手に寄り添って」いる訳ではないし、「心理的安全性を確保しよう」としている訳でもない。
単純に、他の部下と同じように「普通に」接しているだけだ。
それなのに、本社の人や人事の人は、「何だかあの子生き生きしていますね」「元気になりましたね」というようなことを言ってくれることがある。
そこに何か今回のテーマに対するヒントがあるのではないか、と思ったので、今回の稿を書いている訳なのだ。
もしかしたら、若手がすぐ辞めることで悩んでいる人の助けになるかもしれないから。
やや自慢げに(偉そうに)聞こえるかもしれないけれど、もうしばらくお付き合い頂けたら幸いである。
若手に成熟を促す
さて、では僕が思う有効な対処方法とは何だろうか?
それは「(ウチに限らず)会社ってそういうものなんだよ」ということを諭していく、ということなのではないかと僕は思っている。
もう少しそれっぽい言い方をするなら、「成熟を促す」ということになるかもしれない。
僕が「若手に寄り添うアプローチ」や「心理的安全性アプローチ」に違和感を覚えるのは、彼(彼女)らを幼い者、守るべき者として扱っているような気がするからである。
確かに、人材不足の側面は多大にあるので、そのように大事に扱わなければならない、という気持ち(社会情勢含む)はよくわかる。
ただ、そうは言っても、同じ社会人である。
当然ながら、そこに給料も発生している訳である。
となると、それなりの成果を求めるのが筋なのではないか?
無給だったり、強制労働だったりするのであれば、それは確かに寄り添ったりする必要はあるのかもしれないけれど、会社というのはそういう所ではない。
心理的安全性についても、実現すべく努力し続けることは大事だと思うけれど、そのような状態が普通であるという所までは全く行っていないというのが実情だろう(だからこそ、それが必要だとこれだけ声高に叫ばれている訳だ)。
となると、その人がこの先社会で生きていく為には、たとえ不本意であったとしても、それなりの我慢が必要になるということになるのではないか?
デフォルトを知り、そこからどうするか考える
もちろん、特別な才能があったりすれば違うのかもしれない。
起業したり、それこそ会社勤めであっても、希望が叶うということがあるのかもしれない。
でも、残念ながら多くの社会人はそうではない。
それに抗って努力するのも大事だとは思うけれど、現実はそんなに甘くもない。
となると、そのような状態をデフォルトと受け止めた上で、「じゃあどうするのか?」ということを考えた方が建設的であると僕は思う。
社畜化かもしれないけれど…
これは「社畜化する」ということとは違うと僕は思っている。
でも、多くの若手にはそう見えるのかもしれない。
そして、それは若者としては自然な反応であるとも思う。
だから、僕たちにできることは、社会に染まろうとすることを必ずしも是とするのではなく、それなりの生きやすさをどのように見つけていくかという作法を、ネガティブになり過ぎることなく伝えていくことなのではないか?
僕はそう考えているし、それを成熟と呼びたいと思っている。
そしてそのような態度は、もしかしたら、若手に寄り添い、心理的安全性を付与している、と言えなくもないのではないか?
僕はそんな風に思うのだ。
それではまた。
いい仕事をしましょう。
あとがき
早期離職が叫ばれる昨今ですが、会社を辞めた若手はその後どうなっているのでしょうか?
僕はそのような若手と会う機会もあり、話もするのですが、大抵の人が「辞めなければよかった」という感想を持っているような気がします。
これは当社が良い(または転職先が悪い)ということではなくて、殆どの日本企業というのは残念ながら「そんなもの」である、ということなのだと僕は考えています。
転職を商売にしている会社は、転職するのが当たり前、それがやりがいや充実感に繋がるということを喧伝し、社会もそれをその通り(素晴らしいこと)だと思っているようですが、そんなに甘くはねえよ、というのが僕が思うところです。
ましてや、ある程度の社会経験をした人であればいざしらず、それほどの経験もない若手ができることなどたかが知れています。
もちろん、終身雇用・一社専心みたいな考え方にも違和感はありますが、ジョブホッパー的なムーブもちょっと違うのではないか、と僕のようなおじさんは思ってしまうわけです。
そうは言っても、若手の離職は止まらない。
その中でできることは、成熟を促すことなのではないか?
それが僕が思うことです。
最高の環境はありませんし、最悪の環境に耐える必要もありません。
会社の言うことに染まる必要もありませんし、かといって全無視も違うような気もします。
大事なのは、そのグラデーションの中で、何を大事にするか、です。
そして、それを伝える者自身も持っていることです。
辞めても会いたいと思って貰えるようなマネジメントを続けていきましょう。