部下は褒めると良いらしい?
僕は褒めるのが下手
人を伸ばすには褒めるのが良いという。
古今東西、大体のマネージャー本にはこんなことが書いてある。
御多分に漏れず、僕も着任当初これをやってみた。
だが、うまくいかない。
というより、自分自身がだんだん嫌になってくる。
「本当は褒めるほどじゃないけど、褒めた方がいいんだよな…」と感じながら褒めようとしているから無理が出てくる。
それでも、人は褒められたいものだという言葉はあらゆる所に書いてあるし、何とか僕もこういった偉大なマネージャーに肩を並べ、部下を成長させたい(そしてできれば部下に好かれたい)と思い、色々と工夫を凝らしてみる。
でも、うまくいかない。
たぶん、それをさりげなくできる人がマネージャーに向いているのだろう。
僕は顔に出てしまう。
思っていないことを言うと、「ああ、明らかに思っていないな」という顔になってしまうようだ。
「課長はすぐに顔に出ますよね」と部下にもよく言われる。
何度も誤魔化そうとしたけれど、全然上手くできない。
だから、僕は逆にこれを活かそうと思った。
自分のキャラクターに合わせて、自分なりのやり方でやってみようと思った。
(余談になるが、僕は自分をマネージャーに向いていると思ったことがない。今でも全く向いていないと思う。
これまで偉そうに色んなことを書いてきたけれど、そんな人間でもなんとか続けられている。
だから、もし君がうまくいかないな、と辛く思っていても、そんなに悲観することはない。
僕ですら続けられている。
向上心は大事だけど、完璧を求めるのは諦めよう)
褒めるのが苦手な人でもできる褒め方
僕が今実践しているのは下記のやり方だ。
褒めるのに照れを感じたり、嘘をつくのが苦手な人は是非参考にして欲しい。
- 本当にすごいと思ったことだけ口に出して褒める。
- でも、正直そんなことはあんまりないので、日報上(文字上)ではやや大げさに褒める。
これだけだ。たぶん、世間一般の水準から比べると、明らかに物足りないだろう。
でも僕のキャラクターではこれが精一杯だ。
もう少しうまくやりたいとは常に思っているけれど、現状ではこれがしっくり来ている。
もう少し丁寧に説明する。
- は言葉の通りで、凄いなと思ったことは素直に凄いなと言う。
これも結構最初はハードルが高いけれど、徐々に慣れてくる。
当然ながら素面の方がいいけれど、どうしても苦手であるのなら、少しだけ酒の力を借りてもいい。
これもまたどこかで書こうと思うのだけれど、マネージャーは自分のキャラクターに合わせたやり方をした方が良いと思う。
万人に通用するような方法はあんまり多くないというのが5年やってみての僕の実感だ。
個人的には合わないことは続かないからやめた方がいいと思う。
無理は良くないし、結果的に部下にも信頼されない。
この歳でどうかとも思うけれど、僕は褒めようとするとこちらが恥ずかしくなってしまう。
褒めている自分を俯瞰して見てしまって、「いやいや、心にもないこと言って」と自分を茶化してしまう。
なので、これは僕には向かない。
というより、もう少し経験を積むまでこれはできないな、と保留にしている。
本心なら褒められる
だけど、本当に思っていることなら多少の照れがあっても言える。
本当に思っているからだ。
言うシチュエーションやタイミングはなるべく思った瞬間が良い。
溜めて「きちんと言おう」というのは僕の経験ではあまり良くないと思う。
勿論個人面談の時とか、改まったシチュエーションで言うこともあるし、僕は1対1の面談は得意な方なので、その時はあまり苦ではないし、結構纏めて褒めることもある。
でも個人面談の機会はあまり多くないし(やりすぎも微妙だと思う)、それだけではやっぱり褒める回数が減ってしまう。
「褒め」には鮮度が大事
なので、鮮度を大事にして褒めよう。
誰もいないタイミングの方が効果的な部下もいるし、皆の前で褒められたい部下もいる。
性格に合わせてなるべく早く伝えよう。
結構ハードルが高いけれど(僕だけ?)、本心で出た言葉が上滑ることは殆どない。
自信を持ってやろう。
だがしかし、これだけでは圧倒的に褒める機会が足りない。
それを埋めるのが2.の項目になる。
文字上なら褒められる
優秀なチームを担当しているのであれば、日々素晴らしいことが起きるのだろうけれど、残念ながら僕が担当しているチームではそんなことは起きない。
どちらかというと、叱りたくなることばかりだ。
自分が優秀な担当者だったと自慢するわけではないけれど、マネージャーになってみて、「ああ、こんなにもできない人がいるのか」ということを痛感することになった。
僕にしたら摩訶不思議なことが頻繁に起こる。
なんでこんなことになっちゃうのか、なんでこんなにお客さんを怒らせられるのか、本当にわからないことだらけで、褒めるなんてできない、その気持ちもとてもよくわかる。
だから、僕は日報上で褒めるようにしている。
会社によって形態は違うと思うけれど、業務日誌のようなものは大体あると思う。
何も書かないマネージャーもいるみたいだけど、僕は必ず日報にコメントを書くことにしている。
最初は結構一生懸命書いていたけれど、だんだん書くことがなくなってくるので、ここでも同じように、本当に凄いと思ったことはちょっと多く、無理やり褒めている時は簡潔に書くようにしている(というか、自然とそうなってしまう)。
日報上での褒め方
僕が書くのは本当に些細なことだ。
自分で成果を書いてくるタイプの部下もいるし、殆ど自己主張しない部下もいる。
前者は大げさ過ぎることが多く、後者は控えめ過ぎることが多い。
成果を書いてくる部下の方が書き易いけれど、本心では「それ、褒めるほどじゃないんだけどなあ…」と思っていることもあるので、そういう場合は違う点を褒めることが多い。
口頭で言うのに比べて、こちらの嘘はバレにくい。
というより、褒めるレベルを極端に下げた上での本心なので、何とか嘘にはならない、という方が正しい言い方かもしれない。
無理をしているのだけれど一線は越えない、という感じだろうか。
どちらかというと、プロセスを褒めることが多いと思う。
演技的な要素がないとは言い切れないけれど、本心を出そうとするとそうなることが多い(褒めたくなるような成果が少ないというのも関係しているのかもしれないけれど…)。
苦手な電話の件数を増やそうとしていたり、面倒なお客さんの所に訪問していたり、大変な事務作業をやっていたり、日常の動きの中で「頑張っているな」ということをそこに書く。
部下を見ていることを「伝える」ことが大事
部下がそれをどう感じているのかはわからないけれど、僕は結構これが大事なことだと思っている。
恥ずかしさを承知で言うのであれば、「ちゃんと見てるよ」という僕なりのメッセージだ。
もし僕がマネージャーとして優れている部分があるとするなら、感情の機微に対して人よりも敏感だということだと思う。
僕は自分が営業で苦労した経験もあるので、部下がどういう状況にいて、何に悩んでいるのか、どういう部分で行き詰っているのか、それが大体わかる。
解決するのは難しいことも多いけれど(残念ながら営業である一定以上の成果を上げるためにはセンスが必要だ。これはまたどこかで書こうと思う)、少なくとも共感はできる。
これを積み上げていくと、少なくとも自分と部下の間のコミュニケーションはだいぶ円滑になる。
別に仲良くする必要はないけれど、きちんとチームとして同じ方向を向かせるためには、マネージャーの言っていることを信頼してもらわなければならない。
個人的には好きでなくとも、「こいつの言っていることも一理あるな」と思ってもらうためにはこうした日々の積み上げが非常に大事なのだ。
なので、もしやっていないのであれば試してみて下さい。
即効性はないけれど、じわじわ効いてきますよ。
それではまた。
いい仕事をしましょう。
編集後記
誰しも褒められると嬉しい。でも褒めるのは難しい、というのが今回のテーマです。
これはマネージャーのキャラクターによっても違うと思うのですが、僕はとても苦手です。
最初の頃は本当に声が上ずったり、どもったり、どうしようもない感じでした。
今でも口に出して褒めるのは得意ではないですが、少しは演技が板についてきました(笑)。
というか、以前よりも僕は部下のことを信頼できるようになってきたので、ありがたいなあ、頑張っているなあ、と素直に思えるようになってきた、という感覚に近いと思います。
その人達の仕事以外の側面を知ると、人間性が立ち現れてきて、こんな状況なのに仕事を頑張ってくれているよな、という感覚になってきます。
部下の成長が嬉しい、なんてマネージャーになるまでは欺瞞だと思っていましたが、今はそれを心から実感できます。
功利的に褒めるということではなく、良い所に目が向くように、部下を多面的に知るということがとても大事だと最近は思っています。