繕ったってどうせバレるぜ?

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生まれ変わる、なんてことはない

初任マネージャーがやってしまいがちな過ちは、「カッコつけること」である。

素晴らしい人格を演じようとしてしまうことである。

当たり前の話だけれど、マネージャーになった途端に聖人君子に生まれ変わる、なんてことは起きない。

そのままのどうしようもない自分がそこにいるだけである。

これは「言うは易く行うは難し」であって、どうやったって良い人間を演じようとしてしまうのである(僕はもちろんこれを行い、手痛い失敗に遭った)。

そういう意味では誰もが通らなければならない道なのかもしれないのだけれど、それでも僕よりは傷が浅くて済むように、今日はそういう話をしていこうと思う。

思いのほか他人の評価は正しい

マネージャー経験を重ねて思うことは、時が経つにつれて人の評価というのは安定的に収斂していく、ということである。

それは部下からの評価も上司からの評価もそうである。

エンジン全開でスタートダッシュを決めようと頑張ることは悪いことではないけれど、必要以上に自分を大きく見せようとすることはやめた方が良い。

それが今回の僕からのアドバイスである。

なぜなら、それは早晩バレるし、その過去の幻影みたいなものに自分が囚われてしまうからである。

それよりは、生身の自分のままぶつかっていった方が、一見遠回りに見えるかもしれないけれど、結果的には評価が高まるし、安定化する、と僕は思っている(もちろん生身の自分がそのままでいいということではなくて、向上しようという意欲は常に持ち続けなければならない)。

それくらい人の評価というのは信頼できるものなのである。

(ここで言う人の評価というのは「人事的な評価」ではない。そういう意味では「評判」と言う方が言葉としては適切かもしれない。人事的な評価が眉唾的であるのに対し、評判というのはまあ妥当なところに落ち着くものである)

下方修正レバレッジ

ここには「ギャップ」という概念も関係してくる。

最初から「良い人戦略」を取っていくと、そこからちょっとでも外れた行動が出た時に、レバレッジがかかって評価が下方修正されてしまうのに対し、「普通戦略」もしくは「無愛想戦略」を取っていくと、ちょっとでも良いことをすると評価がうなぎ登りになるという事態が生じる。

これはそのマネージャーの「キャラクター」によってある程度仕方ない面はあるので、一概には言えないけれど、もし「無理をしている」という感覚があるのであれば、それはやめた方が良いと僕は思う(急にやめられないのであれば、良い人度合いは薄めた方が良い)。

というのは、忙しくなったり、ストレスがかかった環境下においては、「良い人」を維持するのはどうやったって難しくなるからである。

そして、悲しいかな、マネージャーという仕事は、そのような肉体的・精神的負荷が過度にかかる局面が必ず訪れるものだからである。

厳しい時ほど人間性が露見するものだと誰もが知っている。

その時にせめてレバレッジが下方にかかるリスクは避けておいた方が良い

それが今回の趣旨である。

有事だけ頑張れはOK

以前にも書いたことであるが、「ピンチはチャンス」であって、平時において不愛想であったとしても、有事にテキパキと仕事ができ、部下のフォローもできれば、その人は「頼れるマネージャーである」という評価を得ることができる。

そして、一度ついたその評価は平時においても有効である。

逆も然り。

だから、自分の能力や精神的キャパシティに余裕がないと自覚している人は、あまり普段から頑張り過ぎない方が良い。

早晩有事が起きるから。

その時まで「あまり良くない評判」を甘受しておけばいい、と僕は思っている。

やっちゃいけないことをやらないだけの簡単なお仕事

僕は自分のキャラクターもあって、ドライで非人間的なマネージャーだと思われているけれど、結構情に厚いところがあって(自分で言うな)、それが有事には高レバレッジとなって評価に反映されていると(自分では)思っている。

そのような僕からすると、長いマネージャー経験の中で、何人もの「良い人」マネージャー達が失墜していくのを目の当たりにしてきたので、「無理しなければいいのにな…」と思うわけである。

別に「普通」でいいのだ。

誰も(ミドル)マネージャーにそんな高い人格や徳性を期待してなんていないのだ。

それに人間なんてそんなものでしかないのである(ここには僕の悲観的な人間観が露骨に反映されている)。

やっちゃいけないことをやらないこと、それだけでマネージャーの評価というのは安定化する。

でも、やっちゃいけないことをやってしまう人が多すぎる。

僕はそんな風に思っている。

バレるならしない方がいい

部下を売らないこと、他責にしないこと、言行を一致させること、間違ったら謝ること、きちんと感謝をすること、これができれば、マネージャーとしては合格点(というかたぶん満点)である。

でも、これがなかなか難しいのも事実である。

だからせめて無理はしない方が良い。

自分の首を絞めるような取り繕いはやめておいた方が良い。

どうせバレるのだ。

そのままの自分で勝負するしかないのである。

それではまた。

いい仕事をしましょう。


あとがき

マネージャーに「力み」は厳禁です。

特に初任マネージャーは、希望に燃えて肩に力が入ってしまいがちですが、これは絶対にNGです。

任期はそれぞれ異なるとは思いますが、1年もやれば、早晩そのメッキは剥がれるからです。

それなら素の状態を早めに見せて、自分のできること・できないことを開示してしまった方が、お互いにとって有益だと僕は思っています。

素のまま、ありのまま、でいきましょう。