全部やろうは馬鹿野郎

やることを絞る

チームに課題が山積していて、それを何とかしなければならないミッションがあなたに与えられていたとする。

その時にあなたはどのように行動するだろうか?

僕の答えはこうだ。

「やることを(できるだけ)絞る」

対して、多くのマネージャーは「全部やろう」としてしまうのである。

僕の経験上、全部をやろうとして上手くいった試しはない。

今日はそんな話だ。

打開策とは?

弱小チームのマネージャーをやっていると、どうしても弱点ばかりに目が行くことになる。

そして上司からのプレッシャーも相応に強いことが多い。

そんな中、マネージャーはどうにかして現状を打開しなくては、と思っている。

ではどうやって現状を打開するのか?

全部に手をつけるのが多くのマネージャーのやり方

「ちょっとずつ全部やろうとする」「全体を少しずつ改善する」というのが僕から見た多くのマネージャー達のアプローチ方法である。

たぶん彼ら(彼女ら)はそうは意識していないだろう。

でも僕からはそう見えるのだ。

それは彼ら(彼女ら)が1つ1つ目に付いた順番に改善手法を考え、手を打っているからである。

弱小チームが弱小であるには理由がある

「目に付いた順番に手を打つ? それって良いことじゃないの?」

そう思われた方もいるかもしれない。

だが、それは間違いだ。

弱小チームが弱小であるのは、それなりの理由がある。

例えば、メンバーの能力が低いとか、要領が悪いとか、その状態に陥っているだけの要因がある。

そのようなメンバーたちが、急に全方位的に仕事ができるようになることはまず起こりえない

注意が散漫になって、全部が中途半端になってしまう。

それをまず肝に銘じておいた方が良い。

理想は捨てましょう

彼ら(彼女ら)はあなたではないのだ。

あなたのように、1つ1つを要領良く的確に改善できないから、現在のようなチーム状況になっているのだ。

理想は早めに捨てること。

それが大事である。

マネジメントの責任もある

勘違いして頂きたくないのは、弱小チームが弱小チームであるのは、メンバーだけの責任ではない、ということである。

やることを絞れていないマネジメントにも大きな問題がある。

何となく普通のチームを率いるように、「これくらいはできるだろう」という甘い考えでマネジメントをしているから、チーム状況が改善しないのである。

しつこいようだが、そうなのである。

できないのだ。

だから、やることを絞る。

できれば1つに絞る。

そうやって「分かり易く」改善していくのである。

成果と評価を分かり易くする

これは「自分の上司対策」という意味合いもある。

何か目に見える改善ポイントがあった方が、マネージャーとしての能力を理解してもらいやすいからである。

「今月はこの項目に注力しました。結果、このように改善しました(他は散々でしたが)」ということを上司に理解してもらえれば、その後の改革も進めやすくなる。

特に新任のマネージャーは目に見える成果を示す必要がある。

その際に手っ取り早いのは、やることを絞り、単純化することである。

これは能力が低いメンバーが集まるチームにおいては、必要不可欠なことである。

「これだけやってくれ(他は考えなくていい)」というのは、動くメンバーとしても理解が簡単である。

そして成果と評価がはっきりと分かり易い(曖昧な要素がない)。

これが重要である。

小さな成功を積み上げる

マネジメント本でよく言われる「小さな成功を積み上げよう」というアプローチ方法は、とても重要であると僕も思う。

負け癖がついてしまっているチームでは、「何をやってもダメ」という雰囲気が蔓延してしまっているからである。

自身も喪失しているし、マネージャーへの信頼感も失墜している。

そんな中では、どんなにカッコいいことを言ったとしても響かないものである。

「どうせまたダメなんでしょ?」と思われるのが関の山である。

だから、理想論は言わないようにする。

綺麗事もナシだ。

単純なこと、誰がやっても実現できそうなことをまずやってもらう。

期間を明確にすると尚良い。

そして成果を計量化する。

それを繰り返す

そうすれば、本当に少しずつではあるが、チームは改善していくのである。

不信感の壁に穴をあける

青臭い話をすると、これはマネージャーへの信頼感の醸成に関係している、と僕は思っている。

大抵の業績低調なチームには、マネージャーや組織に対する根本的な不信感があって、仮に良い施策や方策を示したとしても、斜に構えて、その通りやらないという現象が起こる。

この状態になっては、折角の戦略も戦術も意味をなさない。

だから、最初にすべきことは、この壁を取っ払うことなのだ。

ベルリンの壁とも言うべき、この高い壁に穴をあける。

そうやって、マネージャーの言うことを「信じてみてもいいかもしれない」と思わせていく。

全員は無理だ。

まずは1人だけで良い。

そうやってチームの中に「1人の味方」を見つける。

そこからチームを改善していくのである。

「全部やろう」は何も言っていないのと同義

「全部やろう」というのは、耳触りが良い。

とても良いことを言っているように響く。

でも、僕からすれば、それは何も言っていないのに等しい。

リスクを取らず、ただそれっぽいことを言っているのに過ぎないのだ。

それではまた。

いい仕事をしましょう。


あとがき

今日の話は結構マネジメントの本質を突いていると僕は思っているのですが、いかがでしょうか?

マネージャーの仕事はリスクを取って、仕事を絞ることです。

それによって被る不名誉を引き受けて、チームを前進させることです。

潔く色んなものをやめていきましょう。