情報の開示と共有を

UnsplashPhilip Strongが撮影した写真

情報を開示するととんでもないことをやらかす?

マネジメントという仕事をしていると、「何でこの情報を秘匿しておく必要があるのだろうか?」と思う場面に幾度となく遭遇することになる。

「別に開示してもいいのでは?」と思うことが頻発する。

そのくらい会社というのは、社員を「悪者」だと思っている。

下位者に情報を開示すると、その情報を元にとんでもないことをやらかす。

下位者が情報を持つと、上位者に歯向かってくる可能性がある。

会社が直接的にそう言っている訳ではないけれど、そのようなイメージを感じることはとても多い。

もちろんこのSNS社会においては、ちょっとの話が極大化してしまうリスク(バカッター的なものは言うに及ばず)はあるし、社員の中には実際にとんでもない考えを持っている人がいるのも事実だろう。

でもそれならその人が実際にコトを起こした時に、社内規約だけでなく、法律に基づいてきちんと裁けばいいのでは?

というか、それを想定して情報を制限している方が、日常業務の効率を極端させてしまうのでは?

もちろん程度の問題はあるとは思うけれど、今日はそんなことを書いていく。

日本企業成功の構造

「日本人・男性・正規雇用」により構成された「クローズド」な組織。

それが日本型企業の典型である。

そしてその内部にいる人間には「フルコミットメント」が求められる。

その対価(人質)としての「年功賃金」「終身雇用」

そうやって日本企業は成功を続けてきた。

以前も書いたように、それはその時代においてはとても有用な方法であった。

「ジャパン・アズ・ナンバー・ワン」

それが今少しずつ時代に合わなくなってきている。

それはたぶん日本型企業に勤める構成員の割合に変化が生じてきているからである。

情報も内側にコミットさせるやり方の1つ

「日本人・男性・正規雇用」の働き方こそがマジョリティであり、尊いものである、という考え方は、未だにその存在感を保ってはいるものの、それでも以前と比べると「それだけが働き方ではないのでは?」という考え方を持った人が増えてきているように感じている。

でも、会社の制度(仕組み)は未だに「フルコミットメント」を求め続けている。

全身全霊で、忠誠心全開で、会社に人生を捧げるような働き方。

その人たちの「内輪」の世界で情報を共有(独占)することで、相対的優位性を保つやり方。

「それを少し変えないか?」というのが僕からの提案である。

実力がバレてしまうから?

社内に「日本人・男性・正規雇用」以外の社員が増えた結果、「内輪」の世界にいる人たちは情報を秘匿することで、彼(彼女)らとの差別化を図り、その権力を維持しようとしている。

それは情報が開示されると、自分たちの実力(不足)が露呈してしまうからである。

実際には違うのかもしれないけれど、僕にはそのように思える時がある。

権力を維持する為だけの情報の秘匿はやめたら?

いつの時代においても、権力者は情報を握りたがり、その情報格差を元に権力を維持しようとする。

それはある種やむを得ないというか、人間の性であるのだろう。

そして情報の中には、会社の存続に関わるような重要情報も含まれるだろう。

僕が主張したいのは、そこまでの情報を開示しなさい、ということではないのだ。

「自分たちの権力構造を維持する為だけの情報の秘匿はやめたら?」というマイルドな提案である。

「それを開示したら自分の立場が脅かされると思っているのなら、それなりの実力を身につけたらいいのでは?」

「それができないのは、何らかの疚しさがあるからでは?」

僕はそんなことを思うのである。

アナログなDX

これだけインターネットが普及して、リモートワークだ、DXだと言っているのに、未だに情報は共有されず、どちらかというとアナログな領域に押し込められたままである。

もちろん、Slackのようなチャットツールによって多少は開示の兆しは見られるけれど、それでも社員全員がアクセスできる訳ではなかったりそもそも「偉いおじさん」達はそのツールを使っていなかったりして、重要な情報は奥の方に閉じ込められたままである。

その結果、足元の状況を揃える為の手間が物凄くかかることになる。

各人がどこまで情報を知っているのか、共有すべき事項はどこまでで、どこからが新しい情報なのか、ということが視認できないからだ。

全部が全部「web上で完結しなさい」というのは暴論だとは思うけれど、もう少しデジタルツールを上手に活用することで、仕事の手間は削減されるのではないか?

僕はそんな風に考えている。

情報を開示し共有すれば、マネジメントは簡単になる

新しい世代の台頭。

デジタルネイティブ世代がもう少し成長し、それなりの地位を占めたとき、僕たちの仕事のやり方は変わっていくのだろうか?

様々な無駄に見えるもの。

それを後生大事に取っておくことで、自分の仕事を失わないで済むと思っている残党たち。

そういう面倒くさいものを取っ払って、ストレスを減らしながら、効率的に働いていくこと。

そこにはもちろん「マネジメント」というものが、今以上に必要になるだろう。

いや、むしろ不必要になるかもしれない。

そこにある情報をただ共有し、それを元に議論をすればいいだけだから。

そんなことを夢想しながら、今日も僕はまたどうでもいい情報を開示してもいいか上司と話すことになる。

それではまた。

いい仕事をしましょう。

あとがき

必要な情報が簡単に手に入らない。

マネジメントをやっていて、「もう少しどうにかならんかね…」と思うのはこの部分です。

僕たちの仕事は「判断」であるはずなのに、その判断をする為の材料となる情報を集めることがこんなにも面倒で、体力をかけなくてはならないことに時々本当に嫌気がさしてしまいます。

ましてや、その情報がどのくらい共有されているかがわからないので、議論をどのフェーズから始めていいかもわからないし。

重要情報や個人情報など、隠さなければならないものは別として、それ以外のものは議論の流れも含めて視認できるようにしておいて貰えば、仕事はとてもし易くなるはずなのに、そういう方向にはなかなか進んでいないように思えます。

情報の非対称性を失くし、フラットな地平に立って、判断をしていきましょう。