実力がないのに偉くなると苦労すると思うぜ?

Unsplashchristopher lemercierが撮影した写真

若くして管理職になるのも考え物

若手が管理職になりたがらなくなっている。

これが定説だ。

でも、中には管理職の公募制度等を使って、若いうちから管理職を目指す人たちもいるようだ。

そしてそれを会社も支援していたりもする。

年功制度の悪弊を打破し、新しい風を呼び込む。

考え方としては悪くはないように思える。

ただ、そんなに簡単ではないし、甘くもないよ、と僕は思ってしまう。

僕は比較的若くして管理職になった。

そこから8年以上経った。

そんな僕が思うのは、「あんまり早く管理職になんてなるもんじゃないぜ?」ということだ。

今日はそんな自分の経験も踏まえた話をしていこうと思う。

それでは始めていこう。

響きはいいが…

若手管理職登用。

何となく響きの良い言葉だ。

でも、自分のことを振り返っても、周囲でそのポジションになった人を見ても、そんなに綺麗に上手くいくことなんてないよな、と思う。

もっと言えば、やっぱり管理職はある程度歳を重ねてからの方が良いのではないか、とすら思ってしまう。

若いと自分が最優先になってしまう

もちろん会社としては、若いうちから管理職を経験させ、将来の幹部候補生として育成したい、そのような思惑があるのだろう。

でも、何年もマネージャーをしてきた僕が思うのは、若者というのは単純にマネジメントという仕事に向いていないという事実である。

それは欲が抜けきらないからである。

もう少し詳しく言うなら、「やっぱり自分が最優先」という気持ちが露骨に出てしまうからである。

欲があるとマネジメントには向かない

これは元々の人間性がどうとか、素養があるとか、そういう話ではないように僕は考えている。

もう少し生物学的というか、ホルモン分泌みたいな話であるようにすら思えるのだ。

権力欲であるとか、自己顕示欲であるとか、(もしかしたら性欲であるとか)、そのようなアドレナリンがバシバシと出るような状態にある人は、マネジメントという仕事には向いていないように僕には思える。

もう少し丁寧に言うなら、昭和の時代であればそれでも何とかなったのだろうけれど、現代ではどうにもならない。

というのも、現代というのは、権威だけでは部下をまとめることはできないからである。

その人自身の真の実力みたいなものが問われるから。

そして、自身の欲望と実力が釣り合っていないからである。

欲望と実力が見合った時が、マネージャーの適齢期

これがもう少し歳を重ねてくると、欲望のレベルが下がり、実力が経験と共に向上してくる。

結果、欲望と実力の乖離が小さくなる。

自分を大きく見せる必要がなくなり、身の丈に合ったマネジメントができるようになる。

このくらいがたぶんマネージャーとしての適正な年齢なのだ。

変な型が付いてしまう可能性もある

そういう意味では、若くから管理職を経験させれば、マネージャーとして大成できる、というような考えはやや短絡的であるように僕には思える。

もちろん、その経験が将来的に役に立たないとまでは言えない。

でも、僕が思うのは、労多くして功少なし、ということである。

というか、むしろデメリットの方が大きいかもしれない。

変に肥大化した自己顕示欲に駆動されたマネジメントがマネジメントそのものである、と勘違いしてしまう可能性があるから。

そのようなマネジメントスタイルが、自分に合ったマネジメントスタイルである、と思ってしまう可能性があるから。

若者は管理職に向かない

乱暴な議論ではあるけれど、たぶん若者というのは管理職に向かないのだ。

それは若者だから舐められるとか、そういうことだけではない(僕は当時そう思っていたけれど)。

単純に求められる職務内容と、自身の性質がアンマッチなのである。

そして、そこでの藻掻きみたいなものは、管理職としての実力を養う上で有用であるとも言えない。

それなら、ある程度プレイヤーとしての経験を重ねておいた方が良い、そんな風にすら思ってしまうのである。

遅咲きの方が遠くまで行ける

遅咲きの管理職から、「自分は出世が遅かったから自信がない」と相談されることがある。

でも、そんなことはない、と僕は思ってしまう。

むしろその方が遠くまで行けるのではないか、とすら思ってしまうのだ。

それは欲望と実力が見合った状態で行うマネジメントスタイルという、ある種正当なフォームを最初から身に付けることができるからである。

それが若手管理職となると、変に肩肘を張ってしまったり、力んでしまったりするので、フォームが崩れてしまうのである。

そして変な型が身についてしまうと矯正も難しくなってしまう。

そんな風に思うのだ。

管理職に向いていなければやり直せるシステムを

冒頭に書いたように、若手管理職を登用することで新風を吹き込みたい、という会社側の考え方はわからなくもない。

でも、それなら、その登用された若手管理職が本当に管理職として適任かどうかという事後チェックは定期的に行うべきだと思う。

そして、もしその時点で管理職に向いていないのであれば、プレイヤーに一旦戻す、という選択肢(判断)も全然アリだと僕は思っている。

それは必ずしも「降格」ではない。

単純に今はアンマッチなだけかもしれないのだ。

そして時が来たらまた管理職として登用する。

そのようなフレキシビリティがあれば、若手管理職がトラウマを抱えることなく、真にマネジメントの経験を積むことができるようになるはずだ。

それではまた。

いい仕事をしましょう。

あとがき

今日の話は、若い頃の自分に教えたら少しは気持ちが楽になるのではないか、という内容だと自分では思っています。

というのも、僕自身は若くしてマネージャーになり、そのことで大いに苦しんだからです。

そしてその苦しみには、自分が劣っているからだという考えも伴っていたので、本当にキツかった。

でも、おじさんになった今思うのは、「そもそも僕だけではなく、若者全般はマネージャーに向いていないのでは?」ということです。

若くして管理職になり、苦しんでいる人の何らかの慰めになれば幸いです。