部下だって望んでいない仕事をしている場合がある

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部下のモチベーションが低い理由をもう少し深掘りしてみる

部下のやる気がない。

モチベーションが低い。

そのような愚痴をマネージャーの同僚たちから聞くことがある。

まあ言わんとしていることはわからなくもない。

大抵の部下は、(自分たちに比べて)やる気がなくモチベーションも低いから。

そして、そのような態度が露骨に出ていることで、こちらも嫌な気分になることだってあるから。

ただ、その際に考えた方がいいのは、部下だってその仕事を望んでやっている訳ではない場合がある、ということである。

誰もがやりたい仕事をやっている訳ではない。

やむにやまれぬ事情があって、その仕事をしていることだってある。

そんなことを念頭に置いてみると、部下への見方が変わることがある。

今日はそんな話である。

チームをより良くするために

僕のチームには様々な属性の部下がいる。

生え抜きの社員よりも他社から転職してきた人が多いし、その中には異業種の人もいる。

年齢も僕よりも高い人の方が多い。

そして残念ながら(そして失礼ながら)、有能とは程遠いような人ばかりだ。

そんな環境の中で僕はマネージャーという仕事をやっている。

でも、それを嘆いている訳ではない。

いつも言うように、僕にとってはそれがデフォルトで、そこに対して云々言いたいような気持ちはとうになくなってしまった。

ただ、それでも、このチームがもう少し良い状態になる為にはどうしたらいいのだろうか、ということは考え続けている。

もちろん限界はあるだろう。

しかしながら、まだ改善の余地はあるはずだ。

そう思って、僕は色々な手を尽くしながら仕事をしている。

その中で最近思ったのは、部下だって望んでいる仕事をしている訳ではないのだよな、ということである。

簡単にやる気がないとは言えないよね

上記したように、僕の部下は僕よりも社会人としてのキャリアが長い人が多い。

その過去の経歴を聞いていると、紆余曲折、色々なことがあって、今の会社で今の仕事をすることになった、というような話も多い。

それは望むとか望まないとかよりも、給与水準とか労働時間とか家庭環境とか当時の会社の方針とか、その他諸々の理由が優先された結果、そのようになっている(なってしまった)のである。

と考えると、冒頭の話のように、簡単に「部下にやる気がない」とか「モチベーションが低い」とか言えなくなるよな、と僕は思ってしまうのだ。

自分だってそう

もちろん、僕だって今の仕事が完全に自分の望んだものではないことは確かである。

僕はプレイヤーとしてもっともっと上に行きたかったし、実際に行けるとも思っていた。

でも、ある程度のキャリアを重ねた時に、管理職になるしか上に上がる方法はない、と言われてしまった。

その当時の僕は、今よりも断然上昇志向が強く、そして考えも浅かった為、「まあそういうことなら仕方ないよね」ということで管理職となった。

そこから8年以上が経った。

相変わらず管理職という仕事には慣れないし、向いていないな、と思うことばかりである。

でも、それなりに自分なりのやり方みたいなものもわかってきたのも事実である。

ただ、じゃあそれが天職かと問われると、そうではない、とは答えたいとは思う。

管理職という仕事にやりがいがない訳ではないけれど、望んでやりたい訳でもない。

たまたま何らかの巡り合わせによってそうなったから一生懸命やっているだけで、そうじゃない道が提示されるなら、そちらの方に簡単に行ってしまいそうなくらいの浅い考えである。

矢印の向きによって、自分の言ったことが自分に跳ね返ってくる

ここで冒頭の話にまた戻ってくる。

「いやいや、仕事ってそういうものなんじゃないの?」

「望んでいない仕事であったとしても、それを全うするのが社会人の務めじゃないの?」

そのような話だ。

この種の話についても、僕は基本的には賛成だ。

仕事というのは、望んでいなくても全うすべきだし、そこでそれなりの力を発揮することが求められる(カネを貰っている訳だし)、というのは僕もその通りだと思う。

でも、それはあくまでも矢印が自分に向いているからそう言っているのであって、マネージャーとしてそれを他者(部下)に求めるのはちょっと違うのかな、とも思っている。

もう少し言えば、仮にそうじゃない部下ばかりであっても、仕事を全うさせ、それなりの力を発揮させるのが、マネージャーの仕事ではないか、と思っているのだ。

そういう意味では、部下にやる気がないとか、モチベーションが低い原因は、マネージャーに(も)ある、とすら言える。

だって、それがマネージャーの仕事だから。

甘すぎ?

もちろん、僕だってそこまでできた人間ではないから、時折部下のやる気のなさに苛立つことだってある。

でも、その際に、まず大前提として部下だって望んでいない仕事をしている可能性があることに想いを馳せること、そしてその望んでいない仕事をしているという状況下で、どうやったら力を発揮させることができるのだろうか、とまで考えるのがマネージャーの仕事なのだと考えることは、非常に大事なことだと思っている。

甘すぎる?

面倒見すぎ?

そうかもしれない。

ただ、それが出来なければ、現代の環境においてマネージャーとしての仕事は難しいとも思うのだ。

それではまた。

いい仕事をしましょう。

あとがき

自分の面倒は自分で見る。

大人であれば必要な行為です。

でも、マネージャーが難しいのは、部下に対してそう思いながらも、部下をそのように仕向けることすらが自分の仕事である、という構造になっていることです。

「部下にやる気がないのは、マネジメントが悪いから」

それは正解で、でも、完全に正解でもない。

そのようなジレンマに身悶えしながら、マネジメントというマゾヒスティックな仕事を続けていきましょう。