課長は暇そうでいい
マネージャーの仕事=総務?
中間管理職は忙しい。これが定説だ。
上からも下からも様々な仕事が降ってくる。あらゆることに対処しなくてはならない。
マネージャーになりたての頃は「こんなに幅広い業務をやらなければならないのか」と途方に暮れたものだった。
業績推進と同時に部下も育成しなくちゃならないし、総務的な仕事もあるし、上司はいきなり変なことを言ってくるし、それにも対応しなくちゃならないし、本当にてんてこ舞いだった。
優先順位をつけようにも時間がとにかく足りなくて、行き当たりばったりできることをとりあえずこなしているような状態だった。
翻って現在。
とても暇だ。
意識的にそのようにしているというのももちろんあるけれど、大抵の時間は本当に暇だ。
何が変わったのか?
自分でやらなくてもよい仕事は部下に任せる
凄く大雑把に言うと、業務を部下に任せたことと、量よりも質を重視するようにしたことで大きく仕事のやり方は変わった。
もう少し詳しく説明する。
マネージャーのスタイルにもよるとは思うけれど、大抵の中間管理職は色々な仕事に手を突っ込みすぎだ。
その結果1つ1つが中途半端になる。
何となく「やっている感」は出るのだけれど、ある種片手間にやっているので、どれもあまり大きな成果にならない。
なので、業務の棚卸しをすることを強くお勧めする。
「自分でやらなくてもいいこと」は部下に任せてしまう。
これにはかなりの思い切りが必要だけれど、割り切ってそのようにしてしまう。
もちろん当初は部下から反発がある。
「なんで私がこれをやらなくちゃならないんですか? 課長の仕事でしょ?」という感じだ。
それが本当にマネージャーの仕事であれば、当然マネージャーがやるべきだ。
ただ僕が言いたいのは、「部下では不安なのでマネージャーが抱え込んでいる仕事」については部下に任せるようにした方が良い、「本来の姿」に戻した方が良い、ということだ。
何でもやる課長=良い課長?
これは僕の経験からそう思うのだけれど、本当に多くのマネージャーはあらゆることに首を突っ込みたがる。
その気持ちはよくわかるのだけれど、マネージャーの仕事は違う視点で捉えた方がパフォーマンスが良くなる。
そこで大事なのは量より質だ。
業績低迷のチームの立て直しを任された時に、前任の課長は本当に色々なことをやっていた。
机の上は常時散らかっていて、顧客対応にも時間を割き、事務作業もフルパワーで行っていた。
部下も課長というのはそういうものだと思っていた。
そしてその人は「良い課長」だと呼ばれていた。
これではダメだ、と僕は思った。
実際に全然ダメだった。
僕はその前任課長がやっていた業務の殆どを部下に下ろした。
物凄い反発にあったけれど、思い切ってそのようにした。
当然「何もやりたがらない課長」というような感じで部下には扱われた。
いやいやそうじゃないんだけど、と思いながらも、まだ信頼を得ていない僕はそのような評価を受け入れざるを得なかった。
実際にパフォーマンスが上がるまではタイムラグがあるからだ。
その分空いた時間で、戦略や戦術や営業の仕方や部下の指導やそういうことに力を入れた。
特に大事なのは戦略の部分だ(これは以前書いたことだ。戦略を考えよう参照)。
行き当たりばったりの仕事をしていると、忙しい感じにはなるけれど、パフォーマンスはその程度に留まることが多い。
働いている気にはなるけれど、成果は乏しい。
担当者であればこれでも良いけれど、マネージャーはそれでは失格だ。
効率的に成果を上げなくてはならない。その為には無駄なことはできるだけ避けた方が良い。
暇そうでなにが悪い?
僕が暇そうにしていると、段々と部下は相談に来るようになる。
忙しそうな課長は「忙しいんだから声かけるなよオーラ」を自ら発するのだけれど、僕の場合は基本的に暇なので、彼らも遠慮なく相談に来る。
僕も暇なので(暇つぶしも兼ねて)真剣にその相談に応える。一生懸命一緒に考える。
暇そうなので営業現場にも駆り出される。
そこで僕なりに営業の姿を見せる。
暇そうなので下らない話も部下からされる。僕も下らないことを言うので、職場の雰囲気はくだけたものになる。
段々と部下達は僕の仕事のスタイルを理解するようになる。
そしてその方が確かに理に適っていると思うようになる。
彼らはマネージャーが忙しそうだから今まで不安に思っていたけれど聞けなかったことを次々に相談してくるようになる。
好循環だ。
暇なので事務作業もスムーズにできる。
暇なので机も綺麗になる。
良いことばかりだ。
唯一の欠点は、上司や他の課の人から「暇そうですね」と嫌味を言われることくらいだ。
でも上司も他の課の人も成果が出ているからそれ以上は何も言わない。
マネージャーの仕事は成果を上げることだ。
別に忙しそうにする必要はない。
僕はそう考えている。
本気を出すのは時々でいい
と言っても、瞬間瞬間に本当に忙しいことはある。
マネージャーはダラダラと忙しいのではなく、質を上げてその瞬間を駆け抜けることがすごく大事だと僕は思う。
普段はぼーっとしているのだけれど、やる時はやる、みたいな感じだ。
持久力よりも瞬発力・爆発力の方が大事、みたいな感じだ。
ここまで来るのには僕も結構時間がかかった。
上司の理解も大事だし、ある程度の成果を残しているという過去の実績も必要になると思う。
でも一度このやり方をやってしまうと、以前のようなスタイルには戻れない。
100の力で走っている時には120の力で走ることはできない。
でも普段が60の力であれば、少しの間120の力で走ることは可能だ。
マネージャーは修羅場に急に駆り出された時に、そこで最大のパフォーマンスを出す必要がある。
それ以外は基本的にヒマそうでいいのだ。
それではまた。
いい仕事をしましょう。
編集後記
マネージャー業も慣れてくると「暇だなあ」と思うことが増えてきました。
それまでは営業担当者として本当に文字通り駆けずり回っていたので、一旦慣れてしまうと、「こんなんで給料貰ってていいのだろうか?」と思うくらいの仕事量だと自分でも思ってしまいます。
でも上で書いたように、マネージャーに大事なのは量ではなく質です。
そして「最後には責任を取る」という覚悟です。
僕がしつこいくらいに「結果を出せ」というのはこういう考え方から来ています。
結果を出していれば、どれだけ暇そうでも文句を言われることはありません(妬まれることはありますが…)。
こういうスタイルは世間的には理解されづらいと思いますが、僕は自分で「オレって格好いいわあ」と一人悦に入っています。
どなたか仲間に加わって頂けると幸いです。