課内の揉め事にどう対処するか?

不満を解決するのがマネージャーの仕事?

人間が集まれば、対立が生まれる。

それは避けられないことだ。

当然ながら、チームの中でも色々なことが起きる。

あの人が嫌いとか、あいつがオレの実績を取ったとか、面倒な仕事を人に押し付けるやつがいるとか、本当に毎日のように不満が出る。

課長になりたての頃はこういった不満を全て解決していくことが大事なのだと考えていた。

解決できなくても、小さくしていくことがマネージャーの仕事だと考えていた。

そういうことを放置しているマネージャーが多いこともあって、そうはなりたくない、と考えていたことも関係していると思う。

今は違う。

違うというか、もっと冷めていて、ある問題が解決してもまた違う問題が起きるので、ある程度泳がしておくのも仕方がないかな、というスタンスだ。

不満製造機による課内大気汚染

うまく言えないが、不満を言うことを「仕事」のようにしている人はいる。

たぶん君のチームの中にも1人くらいはいるはずだ。

こういう人は何でもかんでも不満の種にする。

自分がいかに軽んじられているか、そのひどい状況を分かってほしい、そういう「かまってちゃん」的な姿勢がだいたいの元になっている。

この人が不満をまき散らす。

往々にしてこういう人は営業成績が良かったりするので、余計に面倒くさい。

そうすると、課内に「不満を言ってもいいのだ」という空気が充満する。

あちらこちらから不満が漏れ出てくる。

その不満をまき散らしている人に人望があれば一枚岩になりそうなものだけれど、大抵の場合こういう人はこういう人で他の人達から陰口を叩かれている

そしてその悪行の数々をマネージャーに密告してくる人もいたりする。

不満の連鎖。

マネージャーはそれらを全て受け止めなければならない。

はっきり言って人間不信になる仕事だ。

表面上はにこやかにしている課員同士が本気で憎み合っていることなんてザラだからだ。

不満を完全に解決するのは不可能だ

昔は大岡越前みたいに僕はそういう物事を裁いていくのが良い方法だと考えていた。

理を説いて、双方が納得できるやり方で丸く収める、時にはユーモアを交えて、そういうのが理想だと考えていた。

でも、それは無理だ。

子供の時と違って、大人同士が仲直りするなんてことは絶対にない

表面的に繕っているだけで、ずっと根に持っていることが殆どだ。

下手に介入するとその矛先はマネージャーにも向かう。

じゃあ、そのままでいいんですか? そういう声が聞こえてくる。

ニュアンスが難しいのだけれど、そうではない。

仮に10の不満や問題があるとするなら、それを全て解決しようとしていたのがかつての僕だ。

今は10のうち、本当にヤバそうな2つか3つに手を付ける感じだ。

その他の7つか8つは早急に判断せず、状況を見守ることが多い。

どちらかというと、この種の不満はその時の感情に左右されていることが多いからだ。

言うなれば、瞬発力的な不満である。

手を付けなければいけないのは、持久力的な不満ある。

「持久力的な不満」に手をつける

今までの経験から言うと、不満には2種類のものがある。

 瞬発力的な不満…一時の感情に振り回されて生じる不満。感情的な不満。

 持久力的な不満…長年の関係性や出来事の蓄積から生じる不満。粘着的な不満。

瞬発力的な不満は外に出される機会は多いものの、チームの運営上大きな打撃にはならない。

ある種の人にとってはそれはコミュニケーション・ツールのようなものだ。

毛繕いのように、それをし合うことで、関係性を確かめる。

これはある程度放っておいてよい。

問題は持久力的な不満だ。これは根が深い。

そしてあまり表に出てこない。

個人面談とか、1対1の状況で出てくることが多い。

もちろん、持久力的な不満にも納得的なものと、被害妄想的なものがあるので注意しなければならない。

相手のキャラクターや普段の行動等を見極めて判断することが重要だ。

そして持久力的な不満も「解決」しようとしてはいけない。

あくまでも「手を付ける」ことが大事だ。

というか、持久力的な不満は「解決」できないから持久力的な不満になっているのだ。

だがしかし、ここに手を付けないでいると、「あのマネージャーは何もわかっていない」となってしまうので、要注意だ。

僕のスタンスはこうだ。まず話を聞く。

そしてその問題の存在を理解していて、できることなら解決したいと思っているということを示す。

でも、現実的には難しいよね、という形で締めくくる。

不満は解決するのではなく、共感することが大事だ

結局何も変わっていない。

問題はそのままだ。

でも、少なくともマネージャーは理解しているということは伝わる。

そして当人同士もそれが解決不可能であることは薄々わかっているので、それ以上悪化することもない。

冷めた言い方をすると、不満の大半は「私を見て」ということだと僕は思っている。

もちろん、本当にヤバいことはあるし、それについては厳正に対処する。

というか、本当にヤバいことは対処したところで、本人にも負い目があるので大きな問題にはならない。

マネージャーとの関係性は悪化するかもしれないけれど、大事なのはそこではなく、課の運営に悪影響があるかどうかだからだ。

マネージャーが不満を認識していることを表現する

僕が動く時は結構ヤバい時だということが浸透しているから、こういった手法が使えるのかもしれない。

僕は本心を上手く隠すことができないので、良くないと思った時にはそれを正直に出す。

本人に伝える。

それで不満があるなら、その理由を僕に納得できるように説明してみろ、と僕は考えている。

論理的に納得できれば、それを尊重する。

大抵はそうでないことが圧倒的に多い。

なので、僕はわかっている、あなたをきちんと見ている、そして対処すべき事項とそうでない事項か見極めた上で行動している、ということを課員に徹底することが大事だ。

元来僕は人と争うのは好きではないけれど、やる時はやるので、そういうキャラクターであるということを認識させておくことが結構大事だと思う。

結局最終的には人間性で勝負するしかないのだ。

スタンスが一貫していると、課内の1人と揉めたとしても、他の課員からの評価が上がることは往々にして起こる。

「今までのマネージャーは絶対に触れなかった腫れもの」みたいな部下にだって僕はズケズケと言ってしまう。

経験上、矛先がマネージャーに向く方が課の運営は上手くいくことが多いような気がする。

別にその人が嫌いでそうやっている訳ではないのだ。

ただマネジメント上弊害になるから、そうしているに過ぎない。

個人的な好き嫌いではなく、パフォーマンス上邪魔になれば僕は指摘する。

それだけのことだ。

内部での争いごとには何の価値もない

こんな風に割り切れるようになるまで随分時間がかかった。

はっきり言って、仲の良いチームの方が良いし、僕だって毎日楽しく仕事がしたい。

でも、「表面上」仲が良さそうなチームは数字が上がらない。

多少の衝突があっても、本質的に認め合っているチームの方が結果は出やすい。

マネージャーの仕事の優先順位1位は結果を出すことだ。

功利的に言うのであれば、どのようにすれば結果が出やすいのかを考えることが大事だ。

仲が悪いのであれば、その中で結果を出すためにはどうしなければならないのか、それを考えなければならない。

不満はないけれど結果も出ないチームと、不満はあるけれど結果は出るチームなら、間違いなく後者を僕は選ぶ。

もちろんその不満を改善したいとは思うけれど、手を付けてもどうしようもないことに労力を割くのももったいないような気が最近はしている。

それよりは、内部の不満なんて言うのが馬鹿らしいと思わせるように運営することが大事だ。

営業マンが体力を割くべきなのは顧客の利益の為に何ができるかを一生懸命考えることだ。

それ以外は不毛だと思う。

(ちょっと言いすぎたかもしれない)

それではまた。

いい仕事をしましょう。


編集後記

課内に不満が充満していると、生命力が失われていきます。

あと一歩のところで力が出なかったり、前向きな動きが減っていったり、とにかく弊害が大きいのがこの不満の放置です。

しかしながら、長年蓄積された不満はいわば発酵してしまっているので、解決は不可能であることが多いのも事実です。

それを無理やり解決しようとすると、余計に悪化してしまうということも僕は学びました。

本文ではまだぼんやりとした書き方をしていますが、そういった不満をマネージャーが認識していることを示すこと、そして解決不可能であるのであれば、それを「納得させる」ことが大事だと今は思っています。

納得感があれば、不満は不満のままでも、悪影響を及ぼす度合いはだいぶ減ります。

情報が不透明であったり、マネージャーの本心がわからなかったりすると、納得感は生まれません。

できるだけオープンかつ公平なスタンスで不満にはあたることにしましょう。