自我が強いと部下は引く
名営業名課長にあらず
名選手名監督にあらず。
スポーツの世界ではよく言われる言葉だ。
これはビジネスの世界でも同様である。
特に僕のような営業畑では顕著である。
名営業名課長にあらず。
それはなぜか?
もちろん色々な要因はあると思うけれど、現代のビジネス環境に即したことを言うなら、部下の「アイディアの芽を削ぐ」ということが大きな要素であるような気がしている。
自分の意見と部下の意見が対立した時、それも自分の意見の方が客観的に見て優れている時、どちらを採用するか?
もう少し言うと、最終的に自分の意見を採用するとしても、その過程において部下との対話が行われているか?
それがなければ、折角のアイディアが潰されたと部下は感じ、引いてしまう。
今日はそんな話である。
チームが自発的でないのは、マネージャーが原因(であることが多い)
「自発性のあるチームをマネジメントしたい」
「ウチの部下は、自分の意見を持っていないので困っている」
そんな話を色々なマネージャーから、(それこそ腐るほど)聞く。
その度に僕が思うのは、「ああ、きっとこの人は部下の意見を採用することがあまりないのだろうなあ…」ということである。
これは自分のことに置き換えてみればこれはよくわかることだ。
自分の上司が自分の意見を悉く採用しなかったり、仮に採用したとしてもさも自分のアイディアであるかのように吹聴していたら、あなただって段々と意見を言うことをやめるだろう?
言っても無駄だ、と諦めるだろう?
その状態が続けば、客観的にはあなたは「意見を持っていない人」に見えるはずだ。
でも、それまでの過程を考えれば、そうではないことはわかるはずなのだ(そしてあなた自身もそのように主張するだろう)。
多くのマネージャーは、この「過去の過程(変な言葉だが…)」の部分を(都合よく)忘れている。
チームが自発的でないのは、マネージャーが原因である場合がある(多い)。
これはどのマネージャーも肝に銘じるべき言葉だと僕は思っている。
自己愛過多
そして、部下の意見を採用しないマネージャーの傾向として、「オレがオレが」という自己愛が強すぎることが挙げられる。
もっと褒められたい。
自分が凄いことを見せつけたい。
まあ気持ちはわかる。
マネージャーというのは、本当に褒められることが少ない仕事であるから。
それに対し、営業のプレイヤーというのは褒められる機会が多い仕事であるから。
その過去と現在のギャップに煩悶する気持ちはよくわかる。
でも、である。
そのような考え方を捨てなければ、チームが自発的になることはない。
そして、チームの限界はあなたのアイディア止まりのものとなる。
当然、成果はどこかの時点で伸び悩むことになる。
それをいずれ(遠くない将来に)、痛感することになるはずだ。
創発性がある方が単純に有利だよね
自発的なチームが望ましいのは、その方が健全な職場環境であるとか、働きやすくて良いよねとか、そういう話ではなく(もちろんそれもあるが)、単純に創発性があることが現代のビジネス環境においてとても有効であるからである。
裏を返せば、創発性がないチームはどうやったって勝つことが難しくなる。
それをたぶんこの種のマネージャーはわかっていない。
そしてその阻害要因が自分であることなんて思いもよらないようである。
部下の意見はしょうもない?
「いや、でも、部下の意見なんてしょうもないものばかりじゃないですか!」
まあ、言っている趣旨はわかる。
でも、仮にそうだとしても、そのアイディアの芽くらいは尊重することはできるはずなのだ。
そしてそれをチームとして育てていくことも可能なのである。
だから冒頭で、対話が重要だ、と書いたのだ。
上司に物申すのは難しい
日本企業で、上司に何らかの意見を言うということは、(環境が変わってきているとはいえ)なかなかハードルが高いものである。
それも上司が普段言っている意見と異なるものである場合、その難易度は格段に上がる。
そう言った前提を踏まえて、部下が意見具申をしてきたということをまずは尊重すべきなのである。
もちろん、そのアイディアの多くは凡庸なものだ。
ただ、それを如何に加工し、成立させられるかがあなたの腕の見せ所なのである。
「下らない意見だ」と一蹴することは簡単だ。
でも、「どうやったらこの意見を面白くできるか」というところまで考えるのがあなたの仕事なのである。
面倒なことをやらないなら、文句もナシにしよう
これは前回のひらめきの話にも繋がってくるけれど、部下の話を聞いて、そこにひらめきを付与することができれば、戦略は輝かしいものになる。
ただ、それはそれなりに手間も時間もかかる。
1つ1つ部下の(下らない)意見に付き合っている暇はない。
よくわかる。
ただ、それなら、チームに自発性がないことを嘆くのはナシだぜ?
二言目には「心理的安全性」
「心理的安全性」という言葉が、最近はまじないの言葉のように世の中には飛び回っている。
何かと言えば「心理的安全性」。
でも、それを実現することはそんなに簡単なことじゃない。
言いたいことを言いたいように言うのは、日本社会では相当難易度が高いから。
それを崩し、全部ではなくとも、それなりに意見が言えるような環境を作ること。
そしてその力を上手に活用すること。
それがマネージャーの仕事である。
それではまた。
いい仕事をしましょう。
あとがき
部下が自由にものを言える環境を構築すること。
ここが新時代のマネージャーと旧時代のマネージャーの分水嶺です。
綺麗なことを言っていても、実は部下の意見を採用していないマネージャーはたくさんいます。
それなのに、「部下に自発性がない」と文句ばかり言っている。
正すべきは、まずその過剰な自己愛です。
他者を愛せ、とまでは言いませんが、自分を必要以上に愛することはやめた方がマネージャーには向いています。
多様な意見を面白がっていきましょう。