何とかはならない

気持ちは大事。でもそれだけでは…

僕は精神論が嫌いだ。

楽観論も好きではない。

ただ、マネジメントの現場においては、未だにこういった「気持ちでどうにかなる(する)」的な風潮が支配的である。

何度も言っていることであるが、もちろん気持ちは大事だ。

ただ、それは色々な手を尽くした上でのことだ。

最後には気持ちが結果を左右する局面というのは当然ある。

ただ、それまでの間に、本当にすべきことをしたのか、もっとできることはないのか、と探る努力もなしに、こういうことを主張する輩が多すぎる。

それこそ血反吐を吐くくらい熟慮を重ねた上に、戦略というものは生じる。

今日はそんな話だ。

確率を上げることが唯一我々にできることである

以前にも書いたことであるが、マネジメントとは確率論である、と僕は考えている。

あらゆることを想定通りにすることは不可能であるので、確率を上げる作業を行うことで、勝率を高い方向へ持ってくる、というのがマネージャーにできる仕事である。

その他の要因はその他の要因であって、我々が関与することはできない。

ただそれでも、悪い事象が起こったとしても、その影響を最小限に抑えられるように、そして追い風であればそれに乗っていけるように、体制を整えておくことが重要である。

運は大事だ。

ただそれを待っているだけでは運は向いてこない。

神風は吹かない

これは考え方のスタンスの問題であるのかもしれない。

僕はあらゆることを事前に想定しておくことを好む。

最大のリスクを想定して、その事象が起きた時の対処法を考えた上で、仕事に臨んでいく。

万事掌の上、と言ったら言い過ぎであるけれど、そのくらい本当に色々なことを想定している。

もちろん全てのことを精緻に落とし込むということはしないけれど、イメージだけは持っておくようにしている。

それは今回のタイトルでもあるように、「何とかはならない」からだ。

神風は吹かないのだ。

戦力は戦力として厳然としてそこにある。

そこに差があれば、当然負ける。

多少の戦力差であれば、様々な戦術を駆使すれば表面的には対等に戦っているようには見せられるけれど、それにも限界はある。

厳しいけれど、それが現実だ。

そこに向き合うこと、その限られた戦力の中で何ができるのかを考えること、それがマネージャーの仕事である。

戦略家、というと少し大げさになるが、そのくらいの気構えを持って取り組むことで、ギリギリの戦いを勝ちに持ち込むことができるし、結果としてチームというのは確実にステップアップしていく。

想定外と無策は違う

本当に不思議なことに、マネージャーという人種には、過去の数値には異常な拘りを見せる反面、未来の想定については非常に甘いことしか考えられないタイプが多い。

僕からしたらそんなことは想定の範囲である事象についても、「想定外でした」と簡単にのたまったりする。

当初はそれは自己弁護なのかと思っていたけれど、本当に心からそのように思っているようなので余計にたちが悪い。

想定外なのは想定していないからだ。

そもそもの言葉の定義が間違っているのだ。

それは想定外ではない。

僕ならそれは無策と呼ぶ。

それを混同してはいけない。

悪いことへの受け身が取れる体制を

人事を尽くして天命を待つ、という言葉のように、ある程度以上のことは我々に左右できる範疇の物事ではない。

ただ、「人事を尽くす」ことはできるはずだ。

これは以前にも書いた「勝てる戦いをする」ということにも繋がってくるし、裏を返せば、「どうやっても勝ち目のない戦いはしない」ということに繋がってくる。

ニュアンスが上手く伝わるか自信がないが、要は「ふわっと」した気持ちで戦いに臨まないことだ。

当然に悪いことは起こる。

それを受け入れられる体制を取っておく。

それができていないマネージャーあまりにも多すぎる。

折角マネージャーをやっているのだから

プレイングマネージャーに対して好意的に僕が思っていないのも、こういう大局観が欠けている人が多いからだ。

もちろん個々の戦いは重要だ。

時に自らがそこに出張っていくことも否定しない。

ただ、それだけではどうにもならないことがある。

もちろん、チームのサイズであるとか、達成すべき目標値の大きさによって、自分の役割がプレーヤー寄りなのか、マネージャー寄りなのか、というグラデーションはあると思う。

ただ、折角マネージャーになったのであれば、戦略を立てる方に、それを実行させる方に、力点を置いた方が良いのではないか、というのが僕からの提案だ。

仕事を任せることは確かに能力がいる。

我慢も忍耐もいる。

でも、彼らがまるで1つの生命体のように動いていく様を見るというのはマネージャーでなければ体験できないことだ。

運がなくても。根性がなくても。

各々は自発的にバラバラの行動を取っているように見えるけれど、大きな文脈に沿って動いているような状態。

大きな戦略を立てて、個々の戦いに勝てるように戦術や武器を与えていく。

そしてその背景にはあらゆることを想定した緻密な考えが潜んでいる。

運に任せない。

根性に任せない。

運がなくても、根性がなくても、最悪の事態が起こっても、勝ちを拾えるように持っていくこと。

それがマネージャーの仕事だ。

それではまた。

いい仕事をしましょう。


あとがき

これは僕たち日本人の特性であるのかもしれませんが、「最終的には何とかなる」という謎の楽観論に着地することが僕には不思議でなりません。

もちろんその過程において、血の滲むような努力を積み重ねていれば、それに対してとやかく言うつもりはないのですが、どうもそうでないことが圧倒的に多い。

ふっと憑き物が落ちたように、緊張の糸が切れたように、彼らはそこで思考することをやめてしまう

そして案の定失敗する。

それを繰り返したりもする。

その度に僕は暗澹たる気持ちになるわけです。

「そうなったらいいな」と思うのは個人の自由ですが、少なくともマネージャーはそういった思考方法はやめておいた方が良いと思います。

現実的に、勝率を上げていきましょう。