謝れない病
感染者数の増加
コロナウイルスだけではなく、最近職場での感染が広がっている病がある。
それが「謝れない病」である。
僕の体感ではこの数年罹患者が増えている(急増している?)ように感じている。
この病に罹ると「自分がミスを認めたら負け(もしくは死)」としか脳が考えられなくなり、言い訳をごにょごにょ言ったり、他の誰か(例えば部下)のせいにしたりしてしまう状態になってしまう。
面子とか沽券とかプライドとか、そんなことしか考えられなくなってしまうとても怖い病気である。
もちろん特効薬はない。
ただ、予防の為のワクチンはあるように思う。
今日はそんな防疫の話だ。
歳を重ねるとリスクが高まる
この病の特徴は、ある程度の役職に就くと発症する確率が高まる、ということである。
なので、このブログの読者であろうマネジメント層は特に気をつけた方がいい。
裏を返せば、若い頃はこの病に罹るリスクは小さいし、罹ったとしても影響はそんなに大きくないので気にしなくても大丈夫である。
日常的な手洗いとうがいを励行していれば問題ない。
ただ、歳を重ねてくるとリスクが一気に高まるので注意が必要である。
濃厚接触にも注意
一旦罹患すると、取り返しがつかない。
重症化率・致死率も高い。
飛沫感染することはないが、上司との接触が増えれば増えるほど、罹患のリスクは高まる。
部下の人数や、他の課の管理職との人間関係(ライバル具合)にも注意が必要だ。
社内の空気(換気具合)も重要な要素である。
あなたは大丈夫だろうか?
頭を下げられないと陽性と判断できる
この病の判定に、特別な検査薬はいらない。
何かコトが起こった時に、それも明らかにその人に責任がある場合に、頭を下げられない状態であると、陽性判定となる。
もちろん、この検査は万能ではないので(疑陽性である場合もあるので)、経過観察は必要である。
ただ、2回ないし3回この状態が繰り返されるのであれば、これは確実に罹患していると断言できる。
このウイルスは通信回線を通じても拡大する
その場合は直ちに隔離が必要である。
ただ、その隔離というのも、物理的な距離を取るだけでは不十分なのであるから厄介だ。
リモートワークにしたところで、この病は通信回線を通じてそのウイルスを拡大するからである。
というか、むしろリモートワークの方が、ウイルスの活動は活発になるとも言えるかもしれない。
面と向かっていなかったり、ある程度の匿名性が担保されていたりすると、重症化する傾向があるのである。
本来的には社外への放出が適切(真の意味での「ソーシャル・ディスタンス」)ではあるのだけれど、病床数も限られていることから、社内で療養することが現実的な解決策と言えるのかもしれない。
特効薬の開発が待たれるところである。
ラインを適切に見極めることが大事
という茶番はこの辺で終わりにする。
でも、この種の人は本当に増えてきているのだ。
僕は管理職というのは「頭を下げる仕事」であると思っていて、仮に自分達が悪くなくても頭を下げることで事態を進展させられるのであれば、その技を有効に活用すればいいと思っている。
もう少し丁寧に書くと、譲れるラインと譲れないラインを適切に見極めて、それが譲れるのであれば、そして譲ることで今後大きな利が得られるのであれば、適切に頭を下げればいいのだと僕は考えている。
もしかしたら、アメリカの裁判事例のように、頭を下げた瞬間に罪が確定するなんてことを考えている人が増えているのかもしれないけれど、僕の経験上、そうすることによってかえって事態が複雑化することの方が多いような気がする。
でもだからと言って、その複雑化した事態にこの種の人達が主体的に対処しようとすることはないし、結局はその上司なり組織なりが頭を下げることで事態を収拾することになるのである。
そして当の本人は知らん顔である。
これはあまりにもダサい。
場を収める力
もちろん何でもかんでもペコペコしているのも違うとは思うけれど、適切に頭を下げる能力はマネージャーをやる上では必要なスキルであり、資質であると思う。
これは勇気と言い換えてもいい。
度胸や度量と言ってもいいかもしれない。
人の上に立つということは、そういうことなのだ。
部下のミスも含めて、いや、それが仮にミスとは言えない事態だったとしても、自分を下げることで上手に場を纏め、次に進めていく能力はマネージャーには必要不可欠である。
自分と仕事を分ける
ただ、誰しもそんなに強い人間でもないことも事実なのだ。
だから最後にこの病に罹らない為の方法(ワクチン)を書いて、この話を終わりにしようと思う。
それは「自分と仕事を分ける」ということである。
この病の特徴は、プライドや面子みたいなものを守ろうとすると重症化する、という点である。
なので、それを切り離す。
あくまで、仕事として、タスクとして、頭を下げるということを意識する。
最初は演技でも構わない。
舞台上の俳優のように、マネージャーという役をあてがわれた人として、謝るという演技をする。
それはあくまでも「役」なので、自分のプライドや面子とは関係ない。
謝ったとしても、自分が死ぬわけではない。
本当に初歩的なことであるが、まずはここから始めていくと良いと思う。
若いうちに練習を
それに慣れていくと、自分と仕事を切り離さなくても、適切に謝れるようになる。
そして適切に謝れるようになると、自然と部下との関係性が良化し、チームの成果が上がってくる。
些細な違いだ。
でも、重症化する前に、謝る練習をしておいた方がいい。
おじさんになってからこの病気になったら目も当てられないからだ。
それではまた。
いい仕事をしましょう。
あとがき
頭を適切に下げられるようになると仕事が本当に楽になります。
僕は苦情対応も含め、ハード・ネゴシエーションが得意な方(決して好きではない)だと思いますが、それができる人とできない人の差は、この部分にあるような気がします。
嫌われる勇気があれば、素直に謝ることもできます。
ごめんなさいをきちんと言える大人でありましょう。