転職時代における部下との付き合い方

UnsplashNick Fewingsが撮影した写真

転職が普通になった時代におけるマネジメントとは?

転職がカジュアルになった時代である。

以前に比べると転職へのハードルは大きく下がり、転職の為に会社から出ていく人も、入ってくる人もそれなりに多くなっているのが現代という時代である。

僕のチームもそうだ。

チームの半数は転職組である。

そんな転職がある種「普通」になった時代において、部下とはどのように付き合えばいいのだろうか?

彼(彼女)らは、いつまでも同じ職場にいるとは限らない。

だから、少なくとも従前の終身雇用制度を前提とした部下との付き合い方とは変わるはずなのだ。

今日はそんなことを書いてみようと思う。

みんなの言う部下育成って、自社固有スキルを身に付けることなの?

他のマネージャーと話をしていて、違和感を覚えるのが、育成についての概念である。

冒頭にも書いたように、現在というのは転職がそう珍しいものではなくなってきて、特に若手においては割と簡単に会社を変えている(変えることに対しての抵抗感が薄い)ような気がしている。

そんな時代において、部下育成を長期視点で考える必要ってあるのだろうか?

いや、もう少し適切に表現しよう。

「自社の固有スキルを習得する」ことに対して長期視点で考える必要ってあるのだろうか?

古い概念? でもそんなに変わっていないのでは?

仕事におけるスキルは、大きく分けて2種類ある。

自社固有のスキル汎用的なスキルである。

そして、日本企業に勤める上で大事なのは自社固有スキルであるような気がしている。

「いやいや、今どき自社固有スキルなんて古いでしょ?」

そんな反論が聞こえてくる。

でも、実態はそんなに変わっていないのではないだろうか?

仕事を円滑かつ効率的に進める為には、自社のある種独特な文化に染まる必要性があるし、それについては多少薄れたにせよ、そこまで大きく変わっていないように僕は感じている。

もちろん自社固有スキルと汎用的なスキルの線引きは、きっちりと厳格にできるものではないことは事実である。

両者が重なり合う部分もたくさんあるだろう。

でも、感覚的には、多くのマネージャーたちは自社固有スキルを優先させて指導を行っているような気がするのだ。

過剰適応

自社への適応。

文化の継承。

悪くはない。

でも、適応し過ぎるのもどうかと思うのだ。

「1つになろう!」が僕は苦手だ

ダイバーシティということがよく言われる。

転職組も生え抜き組も関係なく、それぞれがそれぞれの個性を発揮するような職場環境を構築せよ。

それは間違っていない。

でも、実際には「1つになろうぜ!」という圧力を感じることの方が多い(当社だけかもしれないけれど)。

文化的な差異はあっても、目指すところは一緒で、同じような行動様式になっていこう!

そんな感じがするのだ。

その度に、「ダイバーシティってそういうことなのだろうか?」と僕は思う。

インクルージョンとはよく言ったもので、包摂されていくことが良いという思想。

そして日本人はそういう思想(1つになること)が好きだ。

「元々は異質であったかもしれないけれど、同じ釜の飯を食って、僕たちは仲間になった」

素晴らしい思想だ。

でも、僕はそれがあまり好きではないのだ。

文化の純度を高めるのは有効だけれど、現実的ではなくなってきている

僕が考えるダイバーシティというのは、大風呂敷を広げるのではなく、そこにいるそれぞれの人がもう既に個性的なので、その個性をできるだけそのままの状態で活用する、というものである。

それは今回の文脈における、転職組やこれから転職していくであろう人に対しても同様である。

「チームには独自の文化が必要である」というのはある種事実で、そのようなカルト性がなければ物凄く高い成果が出にくいというのは、その通りだと僕は思う。

そしてできるなら、僕もそのようなチーム作りをしたい。

でも、現代ではそれは不可能だ。

だから、冒頭に書いた育成という概念も変わらざるを得ないのだ。

異質性を発現させる為の動きを

自社独自の文化に染まる必要はそこまでない。

それよりも、元々持っている個性をどのように発現させるか、その異質性を発揮させる為にはどのようなムーブをすればいいのか、そういう方向性に育成という概念をシフトすべきであると思う。

そういう意味では、たぶん育成ではなく、活用みたいな感じなのだと思う。

「就社」と「就チーム」

プロサッカークラブがそのシーズンを戦うにあたって、もちろん育成の観点がないとは言えない。

でも、それよりも目先の試合に勝つことそのシーズンの順位を少しでも高くすること、そちらの方が優先される。

そして、シーズンが終われば、チームに残る者もいるし、移籍する者もいる。

それくらいのスタンスでいいのだと思う。

もちろんマネージャーの人柄やサッカーが気に入ってチームに残る人もいるだろうし、戦術が合わなくて出ていく人もいるだろう。

そしてこれは会社単位でもそうだし、チーム単位でもそうなのだと思う。

今まではどちらかというと「就社」という感じが強かったけれど、それよりも自分が属するチームがどのような働き方をしているかどうかを大事にすべき、というか。

そういう意味では、会社を変えるのがカジュアルになったように、チームを変えるのもカジュアルになってもいいのかもしれない。

少なくとも、僕たちはもう少しドライであるべきなのだ。

それではまた。

いい仕事をしましょう。

あとがき

転職していった部下と酒を飲むことが時々あります。

僕はその度に、「ああ、オレの仕事のやり方は間違っていなかったのだ」と自信を取り戻します。

どこの会社であろうと(フリーランスであろうと)、プロフェッショナルとして働く為にはどのようなマインドが必要か?

それが僕が伝えられることの全てです。

仕事なんて人生の一部に過ぎない。

でも、大部分を占める大事なものである。

スキルみたいな小手先のことではなくて、奥にある根本的な姿勢。

その火を消さずに、これからも仕事をしていくつもりです。

引き続きご愛顧頂けたら幸いです。