ベテラン社員の扱い方

UnsplashJD Masonが撮影した写真

平均年齢の高いチーム

皆さんの部下の年齢構成はどんな感じだろうか?

今日はそんな書き出しで文章を始めてみる。

僕の部下は約半分が僕より年上で、それ以外も僕と大差ないくらいの年齢が大層を占める「ベテラン中心のチーム」である。

となると、チームの平均年齢も当然ながら僕の年齢よりも上となる訳で、これは当社の中でもかなり珍しい状態であるようだ(ちなみに上司からは社内1位だろうと言われたくらいだ)。

平均年齢の高いチームのマネジメントには、若いチームや普通のチームとはちょっと違う、コツのようなものがある。

当然ながらそのコツには、ベテラン社員の扱い方が含まれることにもなる。

今日はそんな話だ。

ベテランは衰える(成長はしない)

最初からやや気の滅入る話をすると、ベテラン社員は「衰える」ことはあっても「成長する」ことはない、ということをまず肝に銘じておく必要がある。

そして、僕たちマネージャーの仕事は、その「衰える速度」を如何に低下させ、ソフトランディングさせるか、ということに尽きる。

それだけ聞いても、「普通」のチームのマネジメント(チームビルディング)とは大きく違うことがご理解頂けるだろう。

ベテラン中心のチームでは、今日よりも明日、明日よりも明後日が「向上」していることはないからだ。

僕の業務の大半は彼(彼女)らの「コンディショニング」で、フィジカル面・メンタル面共にケアすることに殆どの体力が注がれているのである。

そして扱いが難しい

ベテラン社員はすぐにへそを曲げる

心身ともに不調になったりもする。

昇進や昇格みたいなもので「釣る」こともできないし、「課長」といったポストや威光で言うことをきかせることもできない。

そのような状況の中で、如何にモチベーションを維持し、彼(彼女)らに機嫌良く働いてもらうか、がチームの成果を大きく左右することになるのである。

忌憚なく対話することがカギ

では、どうやったら機嫌良く働いてもらうことができるのか?

僕が考える答えは、「忌憚なく対話する」、これである。

彼(彼女)らはたくさんの愁訴の声を挙げてくる。

そこにはメンタルに関すること、フィジカルに関すること、家族に関すること、その他諸々、本当に人間というのは業が深い生き物であると実感するようなたくさんの悩みや要望や不満を言ってくる。

それを「きちんと聞く」こと。

そしてそれに対して、できることできないことを明確にしながら「きちんと話す」こと。

これがベテラン社員を扱うコツである。

同じ地平で話をすること

テキトーに受け流しもせず、安請け合いもしない。

「立場」や「役職」から偉そうに話をするなんてもっての外である。

同じ地平に立って、忌憚なく対話をすること。

意見陳情を一蹴せず、まずは正面から捉えて、一緒に考えてみること。

そういう姿勢が彼(彼女)らの信頼を勝ち取る上ではとても大事である。

ベテラン社員=無敵の人

そしてベテラン社員というのは、その信頼がなければ動いてくれないということも言い添えておく。

上記したように、彼(彼女)らには、(残酷な言い方をすると)キャリア上の将来がないし、それを自覚してもいる。

別に働かろうが働くまいが、大して処遇が変わる訳でもない。

別に上司だろうが何だろうが関係ない。

言うことを聞く必要もない。

そういう意味ではある種の「無敵状態」とも言える。

無敵の人には話が分かるヤツだと思ってもらうしかない

「無敵の人」が怖いのは、失うものがないからである。

会社という擬制的な組織の中で、上司の話を聞こうと思うのは、その人が「上司」だからである。

色々思うことはあっても、今後の昇進のことや給料のこと、家族のことを考えると、グッと堪える、それが多くの会社員の態度であると思う。

でも、「無敵の人」にはこれが通用しない。

別に上司に嫌われようが、何を思われようが、関係ないのである。

気に食わないことは断固としてやらないお前の言うことは絶対に聞かない、それくらい強い気持ちを持った人だってザラにいる。

そこで何とかマネジメントを行うためには、「話が分かるヤツ」と思ってもらうしかないのである。

そして、それこそがベテラン社員を扱うコツなのだ。

正しさよりも可愛げを

多くのマネージャーが間違えてしまうのはこの点であると僕は思っている。

彼(彼女)らは、ベテラン社員を「成長」させようとする。

何かを教えたり、指導したり、勉強会を開いたり、前向きな試みをやろうとする。

マネージャーとして、間違っているとは言えない。

むしろ、それは正しい態度ですらある。

でも、ベテラン社員を相手にする場合には、その内容なり、精度なり(そして何よりも伝え方)は吟味すべきだ。

良かれと思ってやったことが逆効果になるなんてことがよく起こるからである。

そこで「正しさ」を主張するのではなくて、「もう、課長が言うなら(納得はできないけど)仕方ないわね…(仕方ないな…)」と思ってもらうことがベテラン社員を率いるコツである。

一言で言えば人間性、もう少し言えば可愛げ、そして何よりもケアの心

それがあれば、彼(彼女)らは持ち味を発揮してくれるはずである。

それではまた。

いい仕事をしましょう。

あとがき

ベテラン社員たちが職場でくっちゃべっていて、営業電話もしないでいると、流石の僕もイライラする時があります。

でも、長年ベテラン達と付き合ってきて思うのは、それは仕方がないというか、それも込みで考えるしかない、ということです。

どんなに理を説いたところで、へそを曲げられてしまっては何にもならない。

ボーナスなり、処遇改善で会社が報いてくれるならいざ知らず、そうでないなら、そしてその権限が僕にないなら、彼(彼女)らに気持ちよく働いてもらって、成果を上げてもらうしかない。

それが僕が思うところです。

そしてベテラン社員のいいところは、ある程度の信頼関係ができると、「課長が言うならしょうがねえ、やってやるよ」と快く働いてくれるところです。

人生の先輩達と仕事するのは難しい部分も多いですが、偉そうにせず、立場をわきまえて話をすると、彼(彼女)らは力を貸してくれます。

上手に甘えていきましょう。