見返りを期待しない

UnsplashJan Tinnebergが撮影した写真

暗い人間観

期待するから裏切られる。

だからできるだけ期待しないようにする。

僕の人間観は上記のような暗いものだ。

そこにはこれ以上傷つきたくないという自己防衛の要素が多分にある。

そのような状態でマネジメントという仕事をしている。

でも、そのような人間観はこのマネジメントという仕事において、必ずしも悪いことだけではないのではないか、と思ったので今日はそれを文章にしてみる。

それはポジティブに考えるなら見返りを期待しないことに繋がり、見返りを期待しないことは部下の自律性を育み、チームを良い状態にするのではないか、と。

意味が分からないかもしれないけれど、取り敢えず始めていこう。

上司の心部下知らず

「これだけやってやったのに、なんでアイツは…」

このような文意の話をマネージャーの同僚や後輩から愚痴られることがたくさんある。

その気持ちはとてもよくわかる。

親の心子知らず、ではないけれど、上司の気持ちなんてものは部下は1ミリもわかっておらず、恩を仇で返すという言葉を地で行くようなことばかりが起こるから。

それもずっと続くから。

人間不信

僕は8年もその状態を経験していく中で、だんだんと人間に対する期待を失っていった。

どうせ、という単語が全ての思考の文頭に付くようになっていった。

簡単に言えば、人間不信の状態である。

これは日常生活においては、良いことは一つもない。

だから、変えられるなら変えた方がいい。

それが大前提だ。

期待と失望の乖離

でも、今日の話は、「そのような人間不信の状態というのは、マネジメントという仕事においてポジティブな要素がないわけではない(むしろある)」ということである。

これはどういうことかと言うと、「大半のマネージャーは多くを期待し過ぎており、それはマネジメントにおいて弊害になることが多い」ということである。

何らかの期待値、例えば部下にはこう動いて欲しい、という考え方がマネージャーにあるとする。

でも、現実は先述したようにそうはならないことが殆どだ。

その度に「なんでアイツは…」と思うことになる。

直接的には言わなくとも、言外にそのような行動が出てしまうことだってある。

すると、マネージャーはチームを見くびるというか、見下すようになっていく。

そして、そのような自分の期待に応えられないチームに対して、強権的になっていく。

「言ってもダメだし、サポートしてもダメだし、だったら自分の言う通りにやらせてしまおう(自分でやってしまおう)」

そうやってマイクロマネジメントが進行していく。

もしくは、プレイングマネージャーが誕生していく。

これが日本における典型的なマネジメントスタイルであると僕は思っている。

そしてそこには、「期待」と「失望」の乖離が大きいことが関係しているように僕には思えるのだ。

酷いマネージャー?

対して、僕は部下に期待していない。

結果、失望もしない。

となると、当然ながら、期待と失望の乖離はほとんどない。

言い方は悪いが、部下というのは元々その程度のもので、僕がどう言ったところで大して変わるものでもない、というデフォルト値。

そのようなマインドで僕はマネジメントという仕事をしている。

これは一見すると、「なんて酷いマネージャーなのだ」と思われるかもしれない。

でも、果たして本当にそうなのだろうか?

部下に期待して、でも裏切られて(裏切られたと感じて)、マイクロマネージャー化したり、プレイングマネージャー化したりする人の方が良いですか?

僕はそのように思ってしまうのだ。

部下はお前の養分じゃねえぞ?

そんな僕であるが、「部下によくそんなに仕事を任せられますね」とか「部下が伸び伸びと働いていて羨ましいです」と言われることが結構ある。

それもマイクロマネージャープレイングマネージャー達から。

「僕はあなた達みたいに部下に期待していないからね」

心の中で僕はそう思っている。

もう少し正確に言うなら、「僕はあなた達みたいに(あなた達の思い通りになることを)部下に期待していないからね」ということなのかもしれない。

それは、無私、というと綺麗過ぎるけれど、そこに「オレがマネジメントしてどうにかしてやろう」というような不遜さがないことが関係しているように僕は思っている。

部下は上司の養分ではないし、出世する為の材料でもない。

彼(彼女)らから垣間見えるのは、そのような自己顕示欲である。

それがあるから、思い通りにならない部下に対して腹を立てるのだろう。

それを部下も敏感に感じ取るから、無気力で受動的なチームになるのだろう。

期待を超えた成果を

僕は部下に何も期待していない。

でも、僕のチームは皆自発的に動いている。

それは必ずしも高いレベルとまでは言えないかもしれない。

ただ、時々望外の成果を成し遂げてくることがある。

僕の期待を超えた、素晴らしい成果をもたらしてくれることがある。

僕にできるのは、その確率を上げる作業だけである。

期待するから裏切られる。

でも、期待しなくても裏切られることがある。

そしてそのような裏切りは、僕がマネジメントという仕事を嫌いになり切れない理由でもあったりする。

それではまた。

いい仕事をしましょう。

あとがき

デフォルト値の調整。

これで人生の大抵のことは上手くいくような気がしています。

みんな期待し過ぎ。

そして勝手にガッカリし過ぎ。

それをやめることができたら、やめられなくても調整できるようになったら、もう少し楽に生きていくことができるようになります。

適切に諦めていきましょう。