その暴れ、困らせてない?

UnsplashNoah Buscherが撮影した写真

上司が言う「良い案件」が良い案件であることは殆どない

僕が担当だった時に困ったのが、上司が客先から帰ってきて、「良い案件取ってきたぞ!」「あとは宜しく!」とぶん投げられることであった。

もちろん、その中には確かに良い案件があることもあった。

でも、大半は物凄く甘く判定しても、厳しい案件と言わざるを得ないものばかりだった。

ただ、僕もサラリーマンである。

上司に対して、面と向かって、「いやあ、この案件厳しいですよ…」「なんてもの拾ってきたんですか!」とは言えない。

しかしながら、実現可能性も低いから、顧客にいい顔ばかりする訳にもいかない。

さて。

このような間に挟まれてにっちもさっちもいかないという状況、皆さまもご経験があるのではないだろうか?

もっと言えば、そのような案件をマネージャーであるあなた自身が作ってはいないだろうか?

今日はそんな話である。

マネージャーは顧客を直接担当すべきか?

僕は営業のマネージャーをやっている。

その中でよく言われる話の一つに、「マネージャーも担当先を持つべきである」というものがある。

担当者と同様、課長も担当先を持って直接営業をすれば良い成果が得られる、という考え方。

これは特にチームの成績が低迷している時に持ち出される話でもある。

言っていることはわからないではないし、実際に僕が直接営業すれば、確かにそれなりの成績は上がるだろう。

「でも、それってマネージャーの仕事だろうか?」と僕は思ってしまうのである。

ましてや、それによって一人悦に入ったり、部下を困らせたりしているのであれば、それはやっぱり違うよね、と思ってしまうのだ。

最前線にいないと、やっぱりズレてしまう

以前にも書いたように、マネージャーは孤独な仕事である。

褒められることも少ない。

でも、元々花形営業マンとしてスポットライトを浴びてきた人も多いから、時々そのような称賛が欲しくなってしまう。

だから、自分で手柄を得ようと出張ってしまう。

その手柄を殊更大きく吹聴してしまう。

でも、一方で、現場から離れてしまっていることも事実なのである。

時代も変わり、社内の流れも変わり、お客様も変わっている。

それは営業の最前線で様々なお客様とリアルタイムに接しながら、かつ社内の調整もしながらではないと(それを繰り返していないと)、感じ取れないような微細な違いである。

でも、この微妙なズレが、頓珍漢な案件創出に繋がってしまうのだ。

そしてそれが部下を困らせてしまう。

マネージャーは素晴らしい案件だと思っているかもしれないけれど、全然そんなことはなくて、ただの面倒事を拾ってきた、という解釈を部下にされ、煙たがられることになる。

部下にあなたほどのセンスがないのは確かだろうけど…

あなたはきっとこう思うだろう。

「なんてセンスのない奴だ!」

「この案件の良さがわからないのか!」

言っていることはわからなくはない。

そして、たぶん全くの的外れとも言えないだろう。

ただ、僕がマネージャーを何年もやってきて前提として置かなければならないと思うことは、大抵の部下はあなたほど優秀ではないし、あなたのように動ける部下もいない、ということだ。

確かに、センスもないし、勘所も良くない。

それはきっとそうだ。

でも、ここで一つ立ち止まって考えてみて欲しい。

「あなたのセンスもズレているかもしれませんよ?」と。

ただの迷惑

僕がマネージャーが直接顧客を担当することにネガティブなのは、マネジメントに特化できないというのが一番の理由ではあるけれど、甘噛みすることによって部下が混乱する可能性が高くなるということがある。

そしてその甘噛みがポイントから外れていることによって、更にチームが混乱していく。

でも、当の本人(マネージャー)はそれに気づいていない。

やっぱり営業というのは生ものなのだ。

片手間にできるものではない。

そのようなある種の畏れのようなものを持っていない中で、昔のようにブイブイ言わせられると安易に考えているなら、それはたぶん勘違いで終わる。

あなたは手柄を立てていると思っているかもしれないけれど、そんなことはない。

充実感はあるかもしれないけれど、それはあなたの本業ではない。

それをマネジメントを仕事とする人は肝に銘じなければならない。

部下が乗らなければ、成長はない

僕はマネージャーになってから単独営業は極力しないことにしている。

それは案件が組成されるそのタイミングのライブ感を部下が一緒に感じていないなら、部下がその案件にのめり込むことはないと考えているからである。

当然ながら、部下がのめり込んで仕事をしていないなら、成長もない。

結果、上司だけが暴れ、部下はそれに嫌々ながら付き合っている、そんな状況が生まれてしまう。

また、こういうマネージャーに限って、「ウチの部下は受動的でさあ…」と愚痴ったりしている。

そりゃそうだ、と僕は思う。

あなたがそのような動きをしているから、部下が自律的に動かないのである。

大事なことは、部下に暴れさせることであり、その暴れが一線を越えないようにガイドし、見守ることである。

でも、そのような遠くにある柵(ガイド)は部下に悟られてはいけない。

このような適度な放牧(僕は遠くに柵がある広い牧場をいつもイメージしている)がチームを強くするのだ。

それではまた。

いい仕事をしましょう。

あとがき

マネージャーが暴れるのではなく、部下にどう暴れさせるのか?

これがマネジメントという仕事です。

でも、読んで頂いてわかる通り、自分が暴れず、部下が暴れることはあまり面白くありません。

だからと言って、昔のように暴れるのはNGです。

結局のところ、それは運動会で張り切って、足が縺れる父親のようなムーブに過ぎないから。

大事なことは見守ることです。

若者たちを暴れさせていきましょう。