抽象と具象

UnsplashRodion Kutsaievが撮影した写真

具象よりも抽象の方が高尚なのか?

「戦略」の話をすると、抽象的な概念を持ち出す人によく出会う。

でも、当の本人はそれが抽象的な概念だとは思っていない。

このような状況。

もう少し言えば、「具象よりも抽象の方が高度(高尚)」と考えている人がとても多いと僕は感じている。

もちろん、抽象というのは、現実の事象を煮詰めた上澄み(エッセンス)のようなもので、現実を理解する際の補助線のような役割を担う(そして有効である)、というのはとてもよくわかる。

そして、僕も実際によく使ったりもする。

ただ、マネジメントという話、また戦略という話においては、あまりにも抽象の方向に重心が偏り過ぎているような印象を覚える。

空理空論的というか。

繰り返すが、抽象は大事な概念である。

でも、具象も同じくらい大事な概念だ。

今日はそんな話をしていこうと思う。

抽象的なのに抽象的だとは思われていない戦略が多すぎる

「では、今から具体的に何をするのか?」

これが示せなければ、それを戦略と呼ぶことはできない。

僕はそう思っている。

でも、世の中で使われている戦略という言葉の多くは、どうもそうではないようである。

もっと抽象的なもの。

でも、本人はそれが抽象ではないと思っているもの。

それが戦略という言葉として使われているようだ。

核に辿り着いていないのなら、それは現状分析とは言えない

これは現状分析ができていないことから生じていると僕は思っている。

言い方を変えるなら、クリティカルなもの(戦略の核となるもの)に辿り着いていないことが多いに関係していると僕は思っている。

良い戦略というのはシンプルなものだ。

そこには必ず核となるものが存在している。

そして、それは後から振り返れば、「当たり前のこと」として受け入れられるような性質を帯びている。

行動は1つか2つに絞られるはず

戦略構築において大事なことは、現実を分析し、それを一旦抽象化することである。

その抽象化の過程の中で、競争相手と比較し、こちら側が圧倒的優位に立つものは何なのかという核を見つける。

当然ながら、その核を見つける作業の中には実現可能性が考慮されていなければならない。

そして、その実現可能であり、かつ核となる概念を、具体的な行動に落とし込んでいく。

多くの場合、その行動というのは、1つないし2つくらいに絞られるはずである。

というか、そうでないのであれば、それは現状分析がしっかりできていない証拠であり、核となる概念を見つけられていない証拠なのである。

総花的なものが多すぎる

繰り返すが、良い戦略というのはシンプルなものなのだ。

「全部やろうは馬鹿野郎」

そういうことなのである。

願望や目標、スローガンの類=戦略?

また、戦略というのは、願望や目標のことではない。

これを聞いて、何を当たり前のことを、と思われる方もいるかもしれない。

では、あなたが立てている戦略、もしくはあなたの会社が立てている戦略をよくよく見てみて欲しい。

大抵の「戦略」と呼ばれるものは、願望や目標の類であるから。

もしくはスローガンであるから。

例えば、5か年計画なんかを見てみるとよくわかる。

数字を並べて、「売上○○%増!」「シェア○○%獲得!」なんてものが書いてあるとしたら、要注意である。

そして「顧客満足度の最大化」「リレーションシップの構築」みたいなものがもし「戦略」として描かれているのなら、それはもう笑い話ですらある。

でも、これが世の中的には戦略としてまかり通っている。

今回のテーマに即して言うなら、それは抽象の領域の話(ですらないかもしれないが)である。

大事なことは、それを具象化することだ。

「で、どうするの?」というのがない戦略は戦略とは呼べないのである。

削減しろ!

「いや、そんなことを言われても、具体的に何をやったらいいのかわからないですよ」

そういう人には、まず「やらなくていいことをやらないようにする」ところから始めることをお勧めする。

多くの「戦略」と呼ばれるものは、僕からすればやり過ぎである。

総花的な「戦略」は、戦略ではない。

だから、戦略をシャープにする為に、簡単な方法の1つは「削減すること」である。

「あれも、これも」は戦略ではない

繰り返すが、大事なことは現状分析をしっかりすることである。

ただ、この現状分析は労力がかかるし、それなりの勘所がないと上手くいかない、というのも事実である。

結果、「あれもこれも」みたいな、キマイラのような戦略もどきが出来上がってしまう。

そのリスクを避ける為には、まず極限までやることを減らしてみるといい。

あなたのビジネスのコア(核)となるものは何なのか?

それが競争相手と比べて、圧倒的優位に立っている点はどこなのか?

それを探すために、どんどんやることを減らしてしまうのだ。

「もう無理!」から、更に先へ

「いや、これをなくしたら仕事にならない」と思い出してから、更に1歩、2歩先へ進むのである。

そして「もう、減らせない!」と感じてから、更に1歩進んでみる。

そこにあるのが戦略の核である。

現実は具象で成り立っている

関係者の立場、利害の対立、会社の方針、メンツのアレコレ。

そういったものを調整するのは労力がかかる。

だから、全部の顔を立てよう。

僕がよく見る「戦略」はこのようなものだ。

でも、当の本人たちは大真面目である。

それは抽象化された理想の国では威力を発揮するのかもしれない。

でも、ここは現実だ。

現実では具象しか力を持ちえない。

研ぎ澄まされた戦略を。

それではまた。

いい仕事をしましょう。

あとがき

どうも具象は分が悪い。

なんというか、頭が悪そうに見えるようです。

そんなことはないぜ。

真に考え込まれた戦略というのは、とてもシンプルで、一見すると馬鹿みたいに思えるものです。

コロンブスの卵を笑う多くの人。

その嘲笑を逆に嘲笑って、先へ進んでいきましょう。