好かれようとしてはいけない

成果を出すことが第一優先である

マネージャー初任者にありがちな間違いが、「メンバーに好かれようとしてしまう」ということである。

「いやいや、メンバーに好かれた方がいいでしょ? 円滑に仕事もできるし」

ある程度経験を重ねた人であっても、そのように思う方もいるかもしれない。

断言する。

それは間違いだ。

マネージャーにとって大事なことは、メンバーと仲良くすることではなく、成果を出すことである。

そしてその為には時に非情になることも必要となる。

今日はそんな話をしていく。

必ずしも家族的共同体である必要はない

公私混同、という言葉があるけれど、日本企業においては、「会社=家族的共同体」みたいなイメージがまだ残っていて、そこにいるメンバーは皆仲良くならねばならない、というような考え方があるように思う。

もちろん、それぞれの関係性がギスギスして話もできないような状態だと困るけれど、そうでない「普通」の関係性であれば十分である、と僕は考えている。

優先順位が間違っているのだ。

大事なのは成果を出すことであって、仲良くすることではない。

成果を出した結果として、チームが結束するということはあっても、仲が良いからといって成果が出る訳ではない。

この違いをきちんと認識しておくことが大事である。

指揮命令関係であることを意識する(させる)

特に初任マネージャーは、自分に自信がないこともあってか、メンバーとの関係性を壊したくない、と考える傾向が強いように思う(実際に過去の自分もそうであった)。

例えば仕事を指示する場合においても、嫌われたくないがために「明日の15時までに終わらせて」ではなくて、「忙しいと思うので、時間があればやっておいてね」みたいな言い方をしてしまうことがあると思うけれど、これは絶対に良くないことだ。

マネージャーとメンバーは仕事上の擬制として、指揮命令関係にあるので、この部分の位置関係をしっかりとさせないといけないのだ。

ビジネス上の関係としての上下関係

勘違いして欲しくないのは、前述した家族的関係性のように、父と子みたいな、プライベート領域まで踏み込むような上下関係ではない、ということだ。

あくまでもビジネス上の関係(擬制)として上下関係であること。

役割としての上司部下関係であって、人間としては対等であること。

その辺のニュアンスが非常に大事である。

感情と論理

「友達上司」のような関係性は、上司にとっても心地の良いものである。

マネージャーはある種孤独な仕事であるからだ。

また、「命令」のように「言い切る」ことに抵抗感がある人も多いと思う。

そして、昨今のようなハラスメント環境においては、一つ間違えると危ないのではないか、と考えるのも無理はない。

ただ、間違えて欲しくないのは、指示は指示である、ということだ。

そこには湿度はない

ただの乾いた指示である。

その際に拠り所となるのは、感情ではなく論理(ルール)である。

この辺の使い分けをきちんと行わなければならない。

一線を画す

感情ではなく論理である、ということを言うと、「非情だ!」と言う人もいるかもしれない。

でも非情でいいのだ。

事というのは究極的にはあくまでもビジネスであるからだ。

そして上司部下の関係性というのも、成果を出す為の擬制的な構造に過ぎないからだ。

大事な概念は「一線を画す」ということだと思う。

境界線を示すことがチームに規律をもたらす

上手く伝わっているかわからないけれど、上司というのは評価者であって、部下というのは被評価者である、ということを時折示すことがチームに規律をもたらす、ということを理解しているかどうかで、マネージャーの最初の段階は越えられると僕は考えている。

ヘラヘラとしているだけではマネジメントはできないのだ。

もちろんキャラクターによって、部下との距離感にはある種の幅があって、そのバランスを考えながら仕事をしていくことはとても大事なことだ。

ただ、その境界線を曖昧にするのではなく、「これは仕事である。私は上司としてこれを指示している」ということをきちんとメンバーには理解してもらわなければならない。

プロセスよりも成果

イメージとしては外資系企業みたいな感じで振舞う、ということだ。

それは前述したように、日本企業というのは人間関係(やそれに伴うプロセス)に重きを置きすぎていて、成果に対する感度や重要性が軽んじられているというように感じるからだ。

何度も言う。

大事なのは成果である。

それ以上のことは、まず成果を出してからだ。

孤独に慣れること

そして成果を出す為には、時に厳しいことをメンバーにも言わなければならない。

それは何もあなたが人間として非情であるからではなく、あくまでも上司というペルソナにおいて非情に振舞わなければならない、ということを指す。

もう少し言うと、これは人事評価にも関係してくる話である。

部下を評価する際にも、できるだけ曖昧な項目は無くしてしまった方がいい。

プロセス評価は少なければ少ないほど望ましい。

全てのプロセスは成果を出す為のものだからだ。

そして成果が出ていないという現状は、プロセスも良くなかったことを示しているのだ。

厳しすぎるだろうか?

でも、これができるかできないかで、マネージャーとしての成長速度は大きく変わってくる。

まずは孤独に慣れること。

嫌われることに耐性をつけること。

そこからマネジメントは始まるのだ。

それではまた。

いい仕事をしましょう。


あとがき

感情と論理過程と成果、というマトリックス(4象限)で表を作るとするなら、現在の日本的マネジメントは「感情と過程」に重点を置き過ぎである、と僕は考えています。

そしてそのカウンターサイドである「論理と成果」に対する嫌悪感が強すぎる、とも思っています。

マネージャーをやっていてつくづく思うのは、メンバーとの関係性はビジネス上の関係性の方が好ましいし、ルールに基づいて運営する方がチームに規律が生じる、結果として成果が安定する、ということです。

これを曖昧にすると、その時々のチームの関係性や、感情の起伏によって成果がバラついてしまいます。

嫌われる勇気を持って、時に非情にチームを運営していきましょう。